日経サイエンスは米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本版です。
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目隠し裁判
デニス・シャシャ
ある数学好きな裁判官は,金銭トラブルの調停に独特のやり方をしている。普通の調停と同じに,原告と被告はそれぞれの証拠を裁判官に提出する。しかしそ の前に,原告は自分の要求金額Pを紙に記して封筒に入れ,被告は自分が払ってもよいと考える金額Dをやはり紙に記して封筒に入れる。
裁判官はPやDを知らない。原告と被告がそれぞれの証拠を出し終えたら,裁判官は裁定額Jを決める。しかし,この調停で原告に実際に支払われる金額はJでは なく,PまたはDである。JがDよりもPに近ければ,被告はPを支払い,Dに近ければ,被告はDを支払う。例えば,原告は1800万円もらえると考え,被告は何も支 払う必要がないと考え,裁判官は訴えに800万円の価値があると判断したとする。800万は1800万より0に近いので,原告は何も得られない。
今回の問題は,原告の最適戦略を見つけることだ。裁判官から,彼の裁定額Jは300万円から1000万円の間で,どの値も同じ確率で選ばれるというヒントが出 されたとしよう。このとき,賠償金の期待値を最大にするには,原告はいくら要求するべきか。次に,被告は原告の要求額を封筒の上から盗み読みしていると考えられるとき,原告は要求額Pを変更すべきだろうか。
山崎秀記(やまざき・ひでき)
一橋大学商学部教授。
専門は計算機科学。
Dennis E. Shasha
ニューヨーク大学クーラント研究所教授。
専門は計算機科学。
原題名
Blind Justice
(SCIENTIFIC AMERICAN July 2002)
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