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双子の冒険(4)
山登りロボットの登山ルート
デニス・シャシャ
10歳の双子の天才の活躍を紹介するシリーズ。前回,麻薬運搬バスを突き止めて,大がかりな逮捕劇に一役買った2人に,米連邦捜査局(FBI)は何かご褒美をと申し出た。しかし,2人には別な企みがあるようで……。
GARY ZAMCHICK
「君たちのおかげで,麻薬運搬バスを捕まえることができた。褒賞をと思うが,何がいいかね?」とFBI長官が尋ねたが,「私たち,そんな栄誉には値しません」とクロエは答えた。「それに値するのは,クラッギー・プライムですよ。あの人に研究室と設備をあげるといいと思います。山登りロボットを作りたいんだって」。
クロエたちが合図をすると,手はず通りにクラッギーが部屋に入ってきた。こざっぱりとした服装で,あごひげまで短く刈り込んでいる。大学教授然とした口調で講義を始めた。
「蜘蛛は壁を登る。ヤギも山登りが得意だ。人間ですら結構うまく登る。しかし,トカゲ並みに器用に登ろうとしたら,前途遼遠だ。となると,ロボットはどうかと考えるのは自然の成り行きだろう。私は,脚が2本で腕のない『のぼット』というのを設計したところだ。両足とも物をつかむことができ,片足立ちの状態でからだ全体を回転することができる。ただし,平衡維持装置の設計上の都合で,のぼットは顔を斜面に対して水平より下へは向けることができない。何かにつかまっているときも移動中もだ。しかし,真横に向けることはできる。わかると思うが,のぼットの設計は難しくない。だが,登攀路(とうはんろ)を計画するのは難しい」。
クラッギーは設計図を広げた。驚いたことに予算案まで入っている。FBI長官は,大いに感銘を受けたようで破顔した。
「実のところ,われわれにもそのような案件が1つあるのです」と長官。「登攀路を計画してもらえるというなら,研究資金を出しましょう。力試しの問題があります。クロエとエリも力を貸してくれるでしょう」。
それを聞いて,双子は,背筋をピンと伸ばした。長官が紙の上にスケッチを描き始めた。
「私が理解した限りでは」と長官。「のぼットの脚は,左右に40〜60cmの幅に広げることができ,片方の足はいつでも何かにつかまっていなければならない。つまり,ジャンプはできないということですね。これから,斜面上の格子点のいくつかに足掛かりを置いていきます。隣接する点は水平方向にも上下方向にも40cm離れています。ここまでは,何も問題がありません」。
「しかし,われわれはもっと進んだロボットのことも考えています。それを『万能のぼット』,あなたのロボットを『標準のぼット』と呼ぶことにしましょう。万能のぼットは,一点を除いて標準のぼットと同じです。つまり,顔をどの方向にも向けられるという点を除いて。私に疑問なのは,万能のぼットを登攀路設計計画に取り入れるべきかどうかです」。
ウォーミングアップ問題
下の図のような登攀路を考えよう。のぼットの動きの例を示した。数字のついた曲線は足の動きを表す。奇数1,3,5が右足Bの動き,偶数2,4が左足Aの動きだ。この登攀路ならばロボットの顔が水平より下を向くことはない。
スタート時点では,のぼットはAとBの足掛かりをつかんでいる。標準のぼットは,図に示された5歩で頂上まで登ることができる。万能のぼットなら4歩だけで登れることを示せるだろうか?また,標準のぼットが4歩で登れるような登攀路はあるだろうか?
それはどのようなものか?
左足をA,右足をBの位置からスタートする。矢印に添えた数字の順に足を運べば,顔を水平よりも下に向けることなく,5歩で斜面を登れる。
「他にも問題があります」と長官。「だんだん難しくなる順に,ここに並べてあります」。
問1:
足掛かりの配置によって,万能のぼットは登れても,標準のぼットは登れないという場合があるだろうか?しかも,一番下の段に足掛かりを1つ追加すると標準のぼットでも登れるというような配置が可能だろうか?問題を具体的にするために,5段階からなる配置について考えよ。各段の高低差はどれも40cmだ。
問2:
万能のぼットには登れるが,標準のぼットには登れない,5段階の配置を作れるだろうか?ただし,足掛かりのどれか1つをある方向に40cm移動すると,標準のぼットにも登れるようになる配置だ。
問3:
標準のぼットにも登れるが,万能のぼットならもっとずっと効率よく登れるような5段の配置を見つけよ。つまり,どちらのロボットも頂上に行けるけれども,標準のぼットのほうがずっと多くの歩数がかかる配置だ。
クロエとエリはこれらの問題の答えを見つけた。クラッギーは,何とも怪しげな上機嫌さで,万能のぼットを設計することに同意した。
坂井公(さかい・こう)
筑波大学数学系助教授。専門は計算機科学。
Dennis E. Shasha
ニューヨーク大学クーラント研究所教授。
専門は計算機科学。
原題名
Climbbot
(SCIENTIFIC AMERICANのウェブサイト
http://www.sciam.com/
より)
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