日経サイエンス

日経サイエンスは米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本版です。

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パズリングアドベンチャータイトル
難易度 ★★☆
密輸業者に金貨を預ける デニス・シャシャ

 商人のハラウトは,とても貴重な金貨を手に入れた。これをスイスのチューリヒへ送りたいと思っている。陸路で運ぼうとすると友好的とはいえない国々をいくつも通らなければならない。保険つきの運送手段を使えば安全だが,保険料は運送料と合わせると積荷の5割にもなってしまう。
 ハラウトは自称ジャックという密輸業者に事情を話し,相談を持ちかけた。ジャックは有能だが,あまり信用できない人物だ。ジャックは「俺に預けてみないか?1回の運送につき,金貨1枚の手数料で何枚でも運んでやるぜ」と言う。ハラウトはため息をついた。「おまえは,積荷を全部ネコババするかもしれないだろう。まぁ,そんなことは互いに承知の上だ。だが,もし一度でもそういうことがあれば,もう二度とおまえには仕事を頼まない」。
 ジャックはうなずいた。「もっともだ。俺の評判はよくねえ。 しかしだ。問題はつまるところ同じさ。 俺に預けるか,さもなきゃ高い保険料を払うかだ」。「その通りだ」とハラウト。
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GARY ZAMCHICK
「金貨が何枚あるか知ってるだろう。お前の情報網をもってすれば,そのくらいはわかるからな。金貨が1枚だけなら,手数料として消えてしまう。また,最後の2枚を預けたなら,それをお前が盗むことは間違いない。お前はいつでも一番儲かるように行動するし,それ以外の行動をとる理由はない」。
 

ウォーミングアップ問題
ハラウトの持つ金貨が4枚ならどうだろう。何枚かをジャックに託してみるべきか?

ウォーミングアップ問題の答え
ハラウトが4枚全部を預けたら,当然ジャックはそれを盗む。3枚預けてもジャックは盗む。正直に行動するよりも盗んだほうが儲かるからだ。最初に2枚を預けても,ジャックは,ハラウトが残り2枚を保険つきで送ることを確信して,預かった2枚を盗む。

問題1:ジャックを利用する価値があるとしたら,ハラウトが何枚以上の金貨を持っている場合だろうか?

 上の問題を2人で一緒に考えた後,ハラウトが提案した。「次のようなやり方はどうだ。金貨を何組かに分ける。各組の枚数は最初から教えよう。もし,途中までの組を全部正直に運んだら,次の組もまたお前に預ける。しかし,一度でも積荷を盗んだら,それ以後は保険つき運送を使う。いいか,その時点まで正直に行動していれば,たとえ最後の組の金貨でも,私はそれをお前に預けると約束しよう。どうだ,お前も正直になってみたら?」
 ジャックは笑って言った。「正直にやっても儲けが少なくならないってんなら,正直にやってやろうじゃねえか」。
 ハラウトは自分が提案したやり方そのままに行動するとし,ジャックもそう信じているとしよう。また,ジャックは,儲けが同じならば正直に行動することを選ぶが,儲けに違いが生じるならば,多いほうを選ぶとしよう。

問題2:金貨が10枚の場合,どういう枚数の組に分ければ,ハラウトは,チューリヒに無事に到着する金貨の枚数を最大にできるだろうか?そのようにしたときに,ハラウトが無事に送ることのできる金貨の枚数,ジャックが手数料や盗みによって得る金貨の枚数,保険つきで運送される金貨の枚数は,それぞれいくつだろうか?

問題3:金貨が20枚の場合は?

問題4:
金貨が50枚の場合は?

問題5:
儲けが同じなら,正直に金貨を運んでハラウトを喜ばせるより,積荷を盗むことをジャックが選び,ハラウトもそれを承知しているとしよう。問題2,3,4に対する答えはどうなるだろうか?

 
答えはこちらから
 

訳者 坂井公(さかい・こう)
筑波大学数学系助教授。専門は計算機科学。
 

著者 Dennis E. Shasha
ニューヨーク大学クーラント研究所教授。
専門は計算機科学。
 
原題名
The Smuggler and the Merchant
(SCIENTIFIC AMERICANのウェブサイト
http://www.sciam.com/
より)
 

 
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