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日経サイエンスは米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本版です。

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パズリングアドベンチャーSpecial[特別版]
 
「意外列」の上限を探せ! 田中裕一/平 理一郎

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3月号のパズリング・アドベンチャー「雄弁は銀,沈黙は金」(下の囲みを参照)に対して,読者の平理一郎(ひら・りいちろう)さんが意外列の長さに関する性質を発見し,編集部にメールを送ってこられた。さっそく訳者の田中裕一(たなか・ゆういち)さんとの間でメールのやりとりが始まり,意外列の面白い性質が次々と明らかになっていった。お二人により見つかった意外列の性質,それを用いた探索方法や結果を紹介しよう。(編集部)

3月号の問題(要旨)
 記号列が「2-意外列」であるとは,任意の記号ペアX,Yと任意の正の整数Dに対し,記号列の中で「XのちょうどD個後ろにYが来ること」が2回以上はないことをいう。AAXYBBは,Aの4つあとにBが来るパターンが2回繰り返されるから2-意外列ではない。CABACCは,A-A,A-B,A-C,…など,どの記号ペアに対しても同じ間隔の繰り返しがないので2-意外列だといえる。
 記号の任意の3つの組み合わせX,Y,Zと,任意の正の整数D1,D2に対して,記号列の中で「XのD1個後ろにYが,YのD2個後ろにZが来る」というパターンが2回以上なければ,それは「3-意外列」であるという(注1)。 このようにして一般にm-意外列を定義したとき,k種類の記号を使ったm-意外列の中で,最も長いものは何だろう?きれいな理論を作ることができるだろうか?

 本文の中で示されている意外列の定義(上の囲み)は非常に扱いにくい。だが,「XのD個後ろにYが来る」というパターンが2回繰り返されるとき,X同士の間隔とY同士の間隔は必ず同じ値になる。このことに気がついた平は,2-意外列の判定法を以下のように書き直した。

 長さnの2-意外列において,各記号ごとの出現間隔を全記号について集めると,1〜n−1の範囲に含まれる整数が重複なく現れる。逆に,その条件を満たす出現間隔を持つ任意の記号列は2-意外列である。

 この定義の変形が,意外列を考える上での出発点となった。読者には,これは目からウロコが落ちたように感じられることだろう。
 上の囲みにある例で考えてみよう。AAXYBBではAとBの出現間隔はどちらも1となり,1が重複しているため,2-意外列でないとわかる(XとYは各1回しか出現していないので,出現間隔は考えられない)。CABACCでは,Aの出現間隔は2,Cは4と1と5(両端)であるから重複がなく,2-意外列だとわかる。
 平はここから出発し,後述する考察を経て次の「最大長の定理」を導くことに成功した。

最大長の定理
 k種類の記号からなるm-意外列の最大長は (m+1)k より小さい。


 3月号の問題にあげられていた例で,この定理を確かめてみよう。記号の種類が5(A〜E),10(A〜J),26(A〜Z)の2-意外列を考える。定理によれば,その長さは順に15,30,78よりも小さいはずだ。実際,出題者のシャシャ(Dennis E. Shasha)が用意した答えでは,長さが順に12,26,66となっているので,確かに制約を満たしている。3-意外列では5種類のとき長さ18で,これも条件に合う。しかも,どの長さも定理にいう限界に近い数になっている。したがって,最大長の定理はこの問題の本質をついていると考えられる。
注1:3月号の本文では,X,Y,Zが相異なる記号と書いたが,これは誤訳であり「相異なる」は不必要な条件だった(田中)。

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