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紛争抑止の戦略を立てる
デニス・シャシャ
マフィアの世界で,そして国際紛争の場で,人は他人から力ずくで富を奪おうとする。自分が圧倒的な力を持ちしかも標的が裕福なときが攻撃には“絶好”だ。攻撃を阻止するため,あるいは富を得るために,時に個人やグループは一時的な連合を組む。
次の法則があるとしよう。力は数で表され,連合体の力はその構成グループ(メンバーと呼ぼう)の力の和に等しい。富は力に比例する。AがBを攻撃するのは,Aの勝ちが確実なとき,つまり,Aの力がBの力より大きいときだ。勝者は敗者の富を得るが,力は増えない。参加者はつねに利己的に振舞い,破滅を避けつつ富を得ようとする(自分の力が勝っているのに,攻撃はしないような平和主義者はいない)。
力の分布が「安定」しているときは,戦闘は起きない。これは戦闘を防げるくらい大きな力を持つ連合が形成され,各メンバーにとってその連合にとどまることが利益につながる場合だ。
力の分布が4,2,1だとしよう。この分布は不安定だ。4は,2や1と戦い,彼らが連合を組むか否かにかかわらず打ち負かすことができる。一方,4,2,1,1ならば安定となる。2,1,1は連合を組んで4からの攻撃を防ぐ。さらに,この連合のメンバーが1つでも欠けると残りはすべて4にやられてしまうので,メンバーはその連合にとどまる。
ウォーミングアップ問題として,分布5,4,4を考えよう。これは安定だろうか。5,4,3ではどうか。5,4,4の分布は,2つの4が連合して5を襲うので不安定だ。5の富を分配した後,彼らは安定な(実際,敵のいない)4,4分布になる。一方,5,4,3は,どのグループも無難な勝利を保障されないから,安定だ(下図)。
今月の問題:力の最大値が21で,各グループの力の値がすべて異なるとしよう。最もグループ数が多くて安定になるのは,どんな集まりか。力の値が異ならなくてもよい場合はどうか。
さらなるチャレンジ:「蜂の一刺し」を持つことがあるとしよう。これは自分よりも強い力の者をも破滅させる防御力だが,その一刺しを使えば相討ちになって自分も死ぬ。例えば,5が蜂の一刺しを持つ4を攻撃したとすると,5と4はともに死ぬ。したがって,5は4を攻撃しない。「蜂の一刺し」は攻撃を抑止するので,本質的に状況を安定させる働きを持つように思える。はたしてそうだろうか? この能力を獲得したグループがあると,状況が不安定になることがあるだろうか。
ウォーミングアップ問題
ウォーミングアップ問題の答え
力の分布が5,4,3のときはどのグループにとっても攻撃を仕掛けないほうが得策となり,状況は安定する。
山崎秀記(やまさき・ひでき)
一橋大学商学部教授。
専門は計算機科学。
Dennis E. Shasha
ニューヨーク大学クーラント研究所教授。
専門は計算機科学。
原題名
Strategic Bullying
(SCIENTIFIC AMERICAN October 2003)
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