日経サイエンスは米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本版です。
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確実な金庫の破り方
デニス・シャシャ
今回あなたには金庫破りになってもらう(もちろん,ロビンフッドのような義賊だ)。目指すお宝は,10個のダイヤルからなる組み合わせ錠がついた金庫の中にある。個々のダイヤルにはA,B,Cという3つの位置があり,全体として3の10乗(=5万9049)通りの組み合わせがある。ただ,幸運なことに,そのうちの3の8乗(=6561)通りの組み合わせのどれでも金庫は開くことになっている。
金庫を開けるルールは単純だ。10個のうち特定の2個のダイヤルが“真のダイヤル”で,この2個を正しい位置に合わせれば,後はハンドルを引くだけだ。他の8個のダイヤルの位置は全く関係がない。しかし,どの2個が真のダイヤルなのかはわからないし,隣り合っているとも限らない。
金庫が開く組み合わせはたくさんあるので,ランダムに試してみるのも悪くはない戦略だ。平均して9回に1回は当たる。しかし,あなたはこれまでとても不運なことばかり続いているので,今回は運まかせにせずに,確実にすばやく開ける方法が知りたいのだ。試行回数を20回未満に抑え,しかも確実に金庫を開けられる方法があるだろうか? あるとすれば,どういう組み合わせを試していけばいいだろう?
ウオーミングアップのために次の問題を考えてみよう。
ダイヤルは4個だけとする。各ダイヤルに3つの位置があり,特定の2個のダイヤルの位置が合えば金庫が開くという条件は元のままだ。この金庫を確実に開けるためには,どんな組み合わせを試していけばいいだろう?
どれが真のダイヤルなのかがわかっていても,開けるためにはA・B・Cのすべての組み合わせを調べなくてはならず,それには最大で9回かかる(2個のダイヤルの位置の組み合わせはAA,AB,AC,BA,BB,BC,CA,CB,CCの9通りある)。
真のダイヤル2個がどれかがわからなければ,下表の11通りの組み合わせを順に調べていけば金庫は確実に開く。この一見単純な表を注意深く見ると,隣り合っている・いないにかかわらず,どの2個のダイヤルのペアに対しても,9通りの組み合わせがすべて含まれていることがわかるだろう。
ウオーミングアップの答え
4個のダイヤルがある金庫を開ける組み合わせ
第1
第2
第3
第4
1:
A
C
C
C
2:
B
B
B
C
3:
C
B
A
A
4:
A
A
B
A
5:
A
B
C
B
6:
B
A
A
B
7:
C
A
A
C
8:
B
C
C
A
9:
C
C
B
B
10:
C
A
C
B
11:
A
C
A
A
田中裕一(たなか・ゆういち)
アルティス・リサーチ代表。
専門は計算機科学。
Dennis E. Shasha
ニューヨーク大学クーラント研究所教授。
専門は計算機科学。
原題名
Safecracking
(SCIENTIFIC AMERICAN March 2003)
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