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タンパク質の鐘は鳴る
デニス・シャシャ
1950年代にパリにあるパスツール研究所のモノー(Jacques Monod)とジャコブ(Françis Jacob)は,大腸菌のある種の調整タンパク質が他のタンパク質の生成を抑制できることを示した。タンパク質Xがタンパク質Yを抑制することをX→Yと書こう。このときXの生成量が上がれば,短い時間(例えば1秒)の後にYの生成量は下がって消える。Xが下がり,Yを抑制する他のタンパク質もすべて下がっていれば,1秒後にYが上がる。
さて,タンパク質A,B,Cの間にA→B→C→Aという関係があるとしよう。Aが上がれば1秒後にBが下がる。次にCが上がり,その後Aがもとのように下がる。パターンはこの後1秒ごとに,Bが上がり,Cが下がり,Aが上がり,Bが下がり……と続く。これをタンパク質回路と呼ぼう。A,B,Cは周期的に上下し,生物時計のように動作する。このような時計は数年前,当時プリンストン大学の院生だったエロビッツ(Michael Elowitz)と指導教官のライブラー(Stanislas Leibler)によって実際に構成された。
タンパク質回路
今月の課題は,70秒ごとに鳴る「タンパク質の鐘」を作ることだ。AからHまでの8種類の回路があり,順に3,5,7,9個のタンパク質からなる。どの回路のタンパク質も他の回路のタンパク質には影響を与えない。しかし,上がったときに鐘を鳴らす特殊なタンパク質Tがあり,回路のそれぞれにTを抑制するタンパク質が1つずつある。それら8種類のT抑制タンパク質(A1からH1)は,どれかが上がれば1秒後にTが下がり,すべてが下がると1秒後にTが上がる。
A1〜H1まで全部下がれば鐘は鳴る
タンパク質回路をスタートさせるには,回路中のタンパク質の1つを一定時間上げ続ける必要がある。例えば回路Cの場合,C4を5秒間上げ続ければ,回路は間違いなく動き始める。C4を上げ始めて1秒目にC5が下がり,2秒目にC1が上がる。その後,C2が下がりC3が上がるが,5秒目,C4はまだ上げられたままなので下がらない。C3はC4が放されてから1秒後(すなわち6秒目)までC4を下げることはできない。6秒目以降,サイクルは妨害されることなく再開される。すなわち,7秒目にC5が上がり,8秒目にC1が下がる。この後,C1は13秒目に上がり18秒目に再び下がる。
鐘を70秒ごとに鳴らすには,8つの回路のうち4つを使う(残りの回路は鐘には影響を与えない)。問題は,どの回路を使い,それらをどのように開始させるかだ。すなわち,どの回路のどのタンパク質を何秒間上げ続ければ,使われる回路のT抑制タンパク質がそろって下がっている状態が70秒ごとに1秒間だけあるようにできるか。タンパク質は15秒まで上げ続けてもよいが,その後は,動くにまかせなければならない。
山崎秀記(やまさき・ひでき)
一橋大学商学部教授。
専門は計算機科学。
Dennis E. Shasha
ニューヨーク大学クーラント研究所教授。
専門は計算機科学。
原題名
Protein Chime
(SCIENTIFIC AMERICAN January 2003)
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