パズルの国のアリス

みんなで操作するハリネズミロボット(解答)

 条件から,兵士たちは正10角形の頂点にいて,ジャックはその中心にいることがわかるだろう。ジャックの位置Jを原点とし,エースA1とを結ぶ直線をx軸にとれば,Akの座標は(rcos(πk−1)/5),rsin(πk−1)/5))と書ける。だから,正攻法でこの問題にアプローチするなら,P′が一番とっつきやすいだろう。実際,は円の直径だから2rだとすぐわかるし,他にも比較的に計算しやすい距離もある。例えば,詳細は省くが

である。計算に自信のある人は,他のもこうして求めることで,P′にたどり着くのも面白いかもしれない。

 しかし,ここでは複素座標を導入するという少し別の方針でこれらの問題の攻略を試みることにしたい。Jを原点としA1方向に実軸をとると,Akの複素座標は

r(cos(πk−1)/5)+isin(πk−1)/5))

となる。xy座標のときとさほど変わらないようにも見えるが,ω=cos(π/5)+isin(π/5)とおけば,ド・モアブルの公式により,Akの座標はk−1と簡潔に表現でき,しかもこれらの座標はどれも10乗するとr10になるというのがミソだ。つまり,Akの複素座標はx10r10=0という10次方程式の10個の異なる解になっている。従って,因数定理により,x10r10の因数分解

x10r10=(xr)(x)(x2)…(x9

が得られる。最初の問題では,ハリネズミの位置Hの複素座標はhだから,である。よって,

であり,因数分解の式にxhを代入すれば

であることが簡単にわかる。

 次の問題は,因数分解の式を変形して

x)(x2)…(x9)=(x10r10)/(xr)=x9rx8r2x7+…+r8xr9

となることに気づけば,xrを代入して

である。

 最後の問題も,Hの複素座標h(cosθisinθ)を因数分解の式のxに代入してド・モアブルの公式を適用すれば

となる。

 ωn=cos(2π/n)+isin(2π/n)を1の原始n乗根と呼び,e2πi/nなどと書いたりもするが,正n角形に絡む幾何の問題は,複素座標を使うと簡単に解けることがある。正n角形の頂点の座標がωnを使えば簡単に表現できることと,ωnにはn乗すれば1になること以外にも有用な性質がたくさんあるおかげだ。

 例えば,先の因数分解の式は一般のnで成り立ち,

xn−1=(x−1)(xωn)(xωn2)…(xωnn−1

 である。このことから,1,ωnωn2,…,ωnn−1n次未満の基本対称式は0であることがわかる。また,k=1,2,…, n−1について,ωnjk乗和

の値も0である。この事実の応用例として,の積ではなく2乗和,を求めてみよう。先と同様にJを原点としJA1の方向に実軸をとった複素座標を考える。Hの複素座標をαとするとだから,求める和は

である。上の式でzの複素共役を表す。特にである。rαkによらない定数だから,真ん中の2項は総和をとると0になる。よって求める2乗和はS2=10(|α2r2)となり,円の半径r以外には,JとHの距離|α|だけに依存することがわかる。

 ついでにもう1つ応用を。平面上に直線lが引かれているとしよう。この直線と各兵士Akとの距離をdkとするとき,その2乗和,Dd12d22+…+d102はどうなるだろうか。この問題の場合,lからの距離を測るには,lを虚軸にとり,正10角形の中心Jが実軸にのるように複素座標を定めるのが便利だ。このとき,一般に点Pの座標をαとするとPからlまでの距離dと書けるから

である。Jの座標をtとし,A1の座標をtαとすると,Akの座標はtαωk−1で与えられ,|αωk−1|=rであるから,

である。総和をとると,第1項と第4項以外は0になるから,

となり,前問と同様,Dの値は,円の半径r以外には,直線l とジャックの位置Jとの距離|t|にのみ依存する。

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