パズルの国のアリス

くじ引きによる景品分配

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 アリスがイモムシ探偵局にいると,例のマハラジャ出身と噂されるお大尽がやって来た。いつの頃からか不思議の国と鏡の国の合同演芸会で景品や賞金を提供することが恒例となっているが,今日はその提供方法についての相談らしい。

 お大尽は「演芸会で芸を披露する参加者たちはみな芸達者なので,今回も景品などが薄く広く行き渡るようにしようと思っているのだが,一応は順位をつけるのだから,まったく平等に与えるというのは面白くないし,参加者の芸に対するモチベーションも上がらない。かといって,単純に順位に従って賞金額が上がるというのもありふれていてつまらん」と言う。「そこで,こういう趣向を考えた。ともかく芸の良しあしで順位はつけるが,その結果が景品や賞金に直結するのではなく,結果発表後にくじ引きを行う。当たる確率が順位に従って下がっていくというくじだ。1位になったからといって当たるとは限らんし,入賞しなくても当たる可能性があるから,もうひと盛り上がりできるという趣向じゃ。どうかの?」

 「そのようなくじを考案してほしいというのが,今回の相談ですか?」と助手のグリフォン。

 「そうじゃ,察しがいいのう。話が早い。わしとしては,入賞しなかった参加者が当たる確率を基準として最下位入賞者が当たる確率はその2倍,そのすぐ上の入賞者が当たる確率は3倍という具合に,順位が1つ上がるごとに当たる確率が入賞外の者を基準にして1倍ずつ増えていくようにできるとよいと思っている。例えば,20位までが入賞なら,1位の人は入賞外の者の21倍当たりやすいという具合じゃ」

 「なんだ,簡単ではないか」と局長のイモムシが口を挟む。「壺の中に各順位を書いたボールを入れ,誰かに目をつむってその壺からボールを取り出してもらう。そのボールに書かれている順位の人が当たりとすればよい。当たる確率をお大尽の希望通りにするには,例えば20位までが入賞なら,1位のボールは21個,あとは順位が下がるごとに1つずつ減らして20位のボールは2個とする。さらに,入賞外の人たちのボールを1個ずつ入れておけばよい」。

 「おお,なるほど」とお大尽。「ボールをたくさん用意しないとならんことと,景品がたくさんあるのでくじ引きを何度もしなければならんことが面倒だが,なかなかよいアイデアじゃ」。

 それを聞いていたアリスが言う。「もっと簡単な方法もあるわよ。入賞が20位までならボールは21個あればいいわ。ボールには1から21までの番号が書かれてあって,取り出したボールの番号以下の順位の人はみな当たりっていうのはどうかしら。21の場合は参加者全員が当たりよ」。

 「おお,それも面白い。賞金や景品をまとめて配れるのも面倒がなくてよい。しかし,その方法だと1位の人はいつも当たりになるし,下位の人が上位の人よりも多くの景品を受け取ることが決してない。うーむ,ちとくじ引きの精神に反するかもしれないのう」とお大尽。

 その後もいろいろとアイデアが出た。結局,最初のイモムシのアイデアが簡単でよいということに決し,景品が多い分は,その数だけまとめてボールを取り出せばよいことになった。

 ところで,この相談中にグリフォンが次のような妙な案を出した。「まず参加者全員に番号を振る。入賞外の人は全員1,最下位入賞者は2,n位までを入賞として1位はn+1という具合だ。そして同じように壺からボールを取り出すのだが,そのボールの番号が自分に振られた番号を割り切る場合に当たりというのはどうだろう? 例えば,20番の人は1,2,4,5,10,20のボールが出ると当たりだ」。

 「えっ」とアリス。「それで要求を満たすようにできるんですか? 2番の人は1番の人よりも2倍当たりやすく,3番の人は3倍当たりやすいというふうに」。

 「壺の中に入れる各番号のボールの数をうまく調節すれば,大丈夫だよ」とグリフォンは言ったが,それは本当だろうか? 今月の問題は,このグリフォン案に関するものだ。グリフォンの言葉が事実とすれば,壺の中に入れる1番のボールを1個としたとき2番のボールはいくつ入れる必要があるだろうか? 3番,4番のボールはどうだろう。一般にn番のボールはいくつ入れる必要があるかを簡単な式で書けるだろうか?

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