パズルの国のアリス

ハリネズミロボットの操作合戦(問題)

坂井 公1(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 アリスとグリフォンが散歩中にトランプ王宮のクローケーグラウンドを通りかかると,お茶会3人組が何やらワイワイやっているところに出くわした。

 あら,こんなところでお茶会でもないだろうにとアリスは思って「何をなさってるんですか?」と声をかけると,帽子屋が地面を指さした。先に小さな動物がいると思いきや,よく見ると機械仕掛けのハリネズミだ。「クローケーやビリヤードの道具として生きたハリネズミやフラミンゴを使うのは,動物愛護精神に反するということで,最近不評なんだ。それで,ハートの女王が鏡の国の白の騎士に注文して作ってもらったのがこのハリネズミロボットで,俺たちがテスト運転を請け負ったというわけ」と三月ウサギが言う。

 さらに「よくできているよ。リモコンで方向と強さを定めてボタンを押すと,ハリネズミはコロコロと転がっていき,やがて止まる」と言って,手に持ったリモコンのボタンを押す。ハリネズミは実際に1mほど転がって止まった。帽子屋もヤマネも同じようなリモコンを持っている。「そんな大掛かりなものを作らなくても,普通のボールでやればよいのに」とアリスは思ったが,ハートの女王のやることに批判は禁物だ。

 黙って聞いていたグリフォンが割り込む。「いいことを思いついたぞ。ただテストというのも退屈だろうから,それでゲームをしよう。君たち3人は今の位置から動かないことにする。交代にそのハリネズミを動かして,自分とハリネズミの距離を,他の2人とハリネズミの距離の和以上にできたら勝ちというのはどうだい。なかなか勝負がつかないかもしれないから,ハリネズミが止まった位置と限らず,ハリネズミがどこかそういう場所を最初に通過したら勝ちにしよう」。

 ゲームが始まった。しばらくすると特に計画性もなくリモコンを操作しているように見えたヤマネが勝ってしまった。帽子屋が文句を言う。「そりゃそうさ。三月ウサギと俺の距離は近いが,ヤマネの奴はだいぶ離れたところにいる。最初から有利だったに違いない」。

 これを聞いてしばらく考えていたグリフォンが言う。「確かに……かといって,3人の距離をみな同じにするのは面白くない。じゃ,こういうのはどうだろう? 自分とハリネズミの距離をa,他の2人の距離をbとし,sabという量を考える。3人それぞれでこの量を考え,この量が他の2人の量の和以上になる場所をハリネズミが最初に通過したら勝ちというのでは?」

 読者に考えていただきたいのは,グリフォンのこの提案でゲームをした場合,3人それぞれが勝ちになる場所が存在するかということと,そのような場所が存在する場合にゲームは公平といえるだろうかということだ。
また,ハリネズミロボットは地面を走り回るが,ドローンを使って同じようなゲームをしたらどうなるだろうか? ただしドローンは空中に自由に浮かんでいられるものとする。

 一応,問題を厳密に述べておこう。ヤマネのいる点をA,帽子屋と三月ウサギのいる点をそれぞれB,Cとする。最初のゲームでヤマネが勝ったということは,AP≧BP+CPである点Pをハリネズミが通過したということだ。不公平を解消しようとしてグリフォンが新たに提案したゲームでは,ヤマネの勝利条件はAP・BC≧BP・AC+CP・ABとなる。また,ハリネズミではなくてドローンの場合,点PはA,B,Cと同一平面上にあるとは限らないということだ。

 

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