パズルの国のアリス

寂しがり屋の蟻たち(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 初夏の不思議の国はよい天気が続く。日差しはやわらかで風はさわやかだ。この時期のトランプ王宮内の花園は,アジサイやツツジなど色とりどりの花が満開で,一般に開放されている。アリスがのんびりと散歩していると,ヤマネの7匹の姪たちが何やら楽しげに遊んでいるところに遭遇した。

 好奇心のかたまりのアリスだ。何をしているのかと尋ねると,「ここに蟻ん子がたくさんいるの」とサンデイ。「でも変わってるの。多分,生まれたばかりなんだと思うけど,みんな固まって眠っているのよね。それなら巣の中にいればよいのに……」。

 「蟻ん子だって,こんな陽気のときに暗いところばかりでは,嫌になるんじゃない」とマンデイ。「たまには陽だまりで昼寝したいと思ったのかもよ」。

 「そんなことはどうでもいいでしょ,この際」とサタデイが割り込む。「蟻ん子の面白い習性に気がついたのよ」とほかの姉妹たちに目くばせをすると,姉妹はそれぞれ蟻ん子を数匹ずつすくい取り,そばの細長いフェンスの上に1匹ずつ少し離して載せた。蟻ん子が驚いて落ちてしまうことがないくらいの強さでサタデイが手を打ち鳴らすと,蟻ん子は一斉に目を覚ましキョロキョロした。やがて自分が仲間から離れて一人ぼっちになっていることに気がつくと不安になったらしく,一番近くにいる仲間のほうに移動する。こうして2匹以上のかたまりができると,安心したのかその場で再び眠り込む。

 「ね,面白いでしょ。あたしたちも遊んでいていつの間にか一人ぼっちになっていることに気がつくと,急に寂しくなってほかの子を探すことがよくあるけど,蟻ん子も同じだなと思って」

 さて,蟻とヤマネのよく似た習性がどこから来るのかはともかく,読者には次の問題を考えていただこう。各蟻は一番近くにいる仲間のほうに一斉に移動し始め,ほかの蟻と合流して2匹以上のグループを作ると,移動を止めてその場で眠り込む。最初にn匹の蟻がフェンスの上にいたとすると,こうしたグループは平均でいくつできるだろうか? 曖昧性を除くために,フェンスの上というのは線分であり,各蟻の最初の位置は線分上の独立な一様分布に従うものとする。つまり,1匹の蟻に着目したとき,それが最初にフェンス上(線分)のどこにいるかはほかの蟻の位置とは無関係にまったく等確率で生じ,各蟻にとって一番近くにいる蟻はただ1匹に定まるものとしよう。どの2匹の蟻のペアをとっても,その距離と同じだけ離れている別のペアは存在しないと考えてもよい。

 こんな1次元の問題では物足りない読者は,フェンスの上(線分)ではなく,平面で同じ問題を考えていただきたい。n匹の蟻がいて,各蟻の最初の位置は定円盤上の独立な一様分布に従うものとする。蟻が同様に移動してグループを構成していくと,グループの総数は平均でいくつになるだろうか。

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