パズルの国のアリス

続・ヤマネたちの安心領域(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 グリフォンがパズルのネタを考えながら,トランプ宮廷の庭をブラブラしていると,お茶会3人組がぼんやりと遠くを眺めているところに通りかかった。

 「おや,いつものお茶会の会場でなくこんなところで……」と思っていると,帽子屋が「今日は,こいつの付き合いさ」と顎をしゃくってヤマネを示す。三月ウサギも迷惑そうに「今日はいい天気だからというんで,姪たちにどこか外に連れてってほしいとねだられちゃったらしい。まったく,甘々の叔父ちゃんだからな,こいつは」。

 なるほど,3人組の視線の先には,7人の姪たちが思い思いに遊んでいるのが見える。といっても,2011年9月号「ヤマネたちの安心領域」(『パズルの国のアリス 美しくも難解な数学パズルの物語』第29話)でも書いたように,姪たちはそろって目が悪く,互いの姿が見えないと不安になることから,3人が前もって描いた直径100mの円の中にとどまるようにしている。しばらく見ていると,中でもサンデイとマンデイは円のちょうど両端に行き,いまにも円からはみ出しそうになった。

 ヤマネが2人に注意を与えようとしたが,何を思いついたか,グリフォンがそれを制し,サンデイとマンデイにそのままじっとしているように言うと,サンデイの位置まで走っていき,そこから曲線を円内に描き始めた。曲線はグニャグニャと曲がりくねりながらも円内だけを通ってマンデイの位置までつながった。

 「これでよし」とグリフォン。「さて,サンデイちゃんとマンデイちゃん,この曲線に沿って歩いてきてごらん。うまく歩いてきて,2人が握手できたら,ご褒美をあげよう」。

 「え,そんなの簡単でしょ」という2人の顔を見て,急いで付け加える。「あ,ただしね,2人の直線距離は,今ちょうど100mだけど,その距離は次第に近くなる一方であり,いったん近づいたのがまた遠ざかるなんてことがあってはいけないことにしよう。あとね,2人とも曲線を離れてはいけないけど,進んだり戻ったりしてもいいし,1人が動いている間にもう1人が止まっていたりするのはかまわないよ」。

人が褒美にありつけたかどうかである。グリフォンがどういう曲線を描こうと,2人が協力してうまく歩けば,握手可能な位置まで来られるということならば,そのことを証明していただきたい。逆にグリフォンが意地悪な曲線を描けば,上の条件下でどう動いても2人が握手するのが不可能だというなら,その意地悪な曲線を具体的に描いていただきたい。

 問題をあえて数学的に述べれば,円周上の対蹠点対と円内を通りそれらを結ぶ曲線が任意に与えられたとき,その2点を起点として曲線上を連続的に動く動点対は,距離が非増加という性質を満たしたままで,互いに好きなだけ近づくことができるかということだ。

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