パズルの国のアリス

工と白騎士,鏡の国の面子をかけて(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 鏡の国の大工と白の騎士は,息抜きによその国を観光旅行中だ。博物館に寄ったときに,ちょっと面白いものを見た。完全な球形だといううわさの古代の純金製ボールである。

 そばで解説していた学芸員が,たまたま2人が鏡の国からの見学客と知り,相談を持ちかけた。「このボールは,古代の技術力を示す証拠の物件として非常に貴重なのですが,純金製なので,何せこうして展示していても盗難などがないように,ひどく気を使うのです。できたら,この一般展示室には,模造代用品を置いて誰でもさわれるようにして,現物はもっと管理が厳格な特別室に納めておくのがよいと考えています。ところで,鏡の国の工芸技術の水準は非常に高く,このように完璧に近い球体の模造品もきわめて精巧に作れると聞いたことがあります。どうでしょう,そんなことが可能ですか?」/p>

 自国の技術力をほめられて,少しうれしくなった2人である。国の威信をかけて大工が言う。「いやあ簡単ですとも。わしは,そのような技術を持った工場の主と付き合いがありますので,なんでしたらそのボールをお預かりしていって,精巧な模造品を作るように依頼してみましょうか」。

 だが,その言葉に,学芸員はとんでもないという口調で,「いえいえ,このボールは大変貴重なので,博物館から外へ出すなどということはとても考えられません」という。続けて「しかし,幸いに完全な球形といってよいですから,直径か半径がわかりさえすれば,全体を復元するなどは,お国の技術力をもってすれば簡単でしょう」。

 というわけで,球の半径か直径を示す材料だけを鏡の国に持ち帰れば,それをもとに試作できそうだということになったのだが,ここで問題が生じた。この国は,古代に比べて文明が後退していることは間違いなく,球の半径や直径を測るために使えそうな道具が何もないのだ。大工は職業柄,コンパスと定規だけは持ち歩いていたので,これらで何とかするほかない。

 こうして,騎士と大工の2人は古代ギリシャの人たちが取り組んでいたような問題に直面することになった。つまり,コンパスと(目盛りのない)定規だけで与えられた球の半径を紙の上に作図できるかという問題だ。学芸員は,あとできれいに拭き取るという条件の下で,純金ボールの表面に一時的に線を描くことは許可してくれた。ぜひ読者のみなさんのお知恵を拝借したい。

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