パズルの国のアリス

鏡の国はスパイ天国?(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 鏡の国は,他国ともめごとのない平和な国であるが,その分,諜報活動の取り締まりは極めて緩く,情報を集めて解析をする上で都合がよいので色々な国のスパイたちの活動拠点になっている。鏡の国に敵対する国ではないが,某国からは,スパイが4人も入り込み,日々機密情報の収集をしたりその分析をしたりで忙しく活動している。

 2013年3月号パズルの国のアリス2『数学パズルの迷宮』第47話)で述べたように,鏡の国には東西に走る鉄道があり,西端の西ルーク駅を出発した列車は,西ナイト駅,西ビショップ駅,クイーン駅,キング駅,東ビショップ駅,東ナイト駅と順に停車し,最後に東端の東ルーク駅に入る。列車はシャトル運行をしており,しばらく停止したのち,今度は東ルーク駅から逆順に各駅をたどり西ルーク駅に戻る。

 さて,スパイたちは1人が2駅を拠点として諜報活動をしており,4人で8つの駅全体をカバーしているが,互いの持つ情報が必要なことから,毎日午前と午後にそれぞれ1回ずつ列車に乗り,車内で諜報メモを交換する。つまり,午前中の特定時間に西ルーク駅を出発する列車に自分の拠点駅の1つから乗り込み,メモを交換したあと,もう1つの拠点駅で降りるのだ。午後も同様で特定時間に東ルーク駅を発つ列車に乗り込んでメモを交換したあと,元の拠点駅に戻る。こうして,一見,ただの通勤のような行動に見せかけながらスパイ活動を続けているのだ。

 読者には「そんなことは自分には関係ない」とおっしゃらずに次の問題を考えていただきたい。まず,ウォーミングアップとして,何も条件がない場合にスパイたちに担当拠点を割り振る上での組み合わせを計算してもらおう。1人2駅ずつ全部で8つの駅を担当するという以外の条件が何もない場合,何通りの割り振り方が可能だろうか。ただし,スパイは4人いるがその区別はしなくともよい。例えば,西ルーク駅と西ナイト駅を担当するスパイがいる場合,それを担当するのが4人のうち誰かは気にしなくともよい。

 第2問は,メモ交換のためにどの2人のスパイも車内で接触する機会を持つようにするとこの組み合わせが何通りに減るかを考えてほしい。

 情報交換は直接2人が接触しなくても行える。例えば,他の全員と接触するボススパイが1人いれば,そのボススパイを経由して全員が情報を共有することが可能だ。第3問としては,このようなボススパイが存在するように担当拠点を割り振るには何通りのやり方があるかを考えてほしい。

 また,ボススパイがいなくても,誰も乗っていない区間がなければ,メモ用紙をリレーする形で全員が互いに通信することも可能だ。この場合に何通りのやり方があるかを考えてほしい。これを最後の問題としよう。

 最初の問題を解けばわかるように,8駅の場合は割り振り方の総数はさほど多くない。従って,すべての割り振り方を書き出して,後の問題を解くこともできるが,一般にスパイがn人いて,駅の数が2nの場合の一般解を考えていただくと,さらにこの問題を楽しんでもらえるだろう。

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