パズルの国のアリス

モグラ大学の卒業試験(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 今月号はモグラ大学で行われた卒業試験の話にお付き合いいただきたい。モグラ大学は,例のモグラたちがいる無限国でただ1つの大学で,もちろん各学年の学生も教員も無限匹いる。この大学の学長は,ボスモグラの身内でワンマン学長として名を馳せている。その学長が,イモムシ探偵局主催の推理コンテストのことを小耳にはさみ,何を思ったのか今度の卒業生を対象に最終試験をやると言い出した。

 卒業式の当日,卒業予定のモグラ学生たちは1列に並ばされて,卒業証書代わりの角帽がかぶせられるが,悪趣味にも,その角帽には1から5の5段階評価で卒業成績が大きく書いてある。学長の考える卒業試験とは次のようなものだ。卒業予定者は,自分に角帽がかぶせられるときは目をつぶっていなければならない。かぶせられたあとは目を開けてよいが,当然,自分の成績は見えない。また,モグラたちは,生活環境から容易に想像されるように,目が悪く,開けたところで確実に成績が見えるのは自分から前後10匹以内である。帽子をかぶせられたあとは学生間にはコミュニケーションの手段はない。

 最終試験の問題は,読者も御推察どおり,自分の成績を当てることである。外れたら卒業は取り消しだ。ところが,ここで学長は粋な(?)計らいをした。個々の学生を試すのはやめにして,全体で無限匹が自分の成績を当てれば全員が卒業できるという選択肢(一蓮托生案)を学生たちに与えた。その代わり,こちらを選ぶと,自分の成績を当てた学生が有限匹しかいなかった場合,全員が落第ということになる。

 さて,読者から学生モグラにアドバイスしていただきたいのは,個々に勝負する案と一蓮托生案のどちらを選ぶのがよいかということだ。また,もし一蓮托生案を選ぶほうがよいなら,各学生はどのように自分の成績を推測すべきだろうか?

 モグラたちの目が悪くなくて,どんな遠くの学生の成績であろうとそれが見え,しかも全員の成績をひと目で見てとれるならば,一蓮托生案で学生たちが勝利できるのは確実だ。やり方は簡単で,各学生は,自分を除く全員の成績がわかるのだから,1から5までの成績のうち,無限匹のモグラに付いた一番よい成績を自分の成績として推測すればよい。そうすることで,全員が同じ成績を推測することになり,確かにその成績を付けられた学生は無限匹いるからだ。

 実は,この場合には,もう少し厄介な一蓮托生案であっても学生たちが勝利することができる。それは「誤答がたかだか有限匹にとどまるならば全員が合格だが,無限匹が間違えると全員が落第」というもので,次の問題としては,この場合の学生側の戦略を考えていただきたい。集合論で有名な(悪名高い?)選択公理を利用してよいものとしよう。

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