パズルの国のアリス

ビリヤード名人対グリフォン(解答)

 最初の問題は,次ページの図のようにビリヤード台の各クッションを鏡に見立て,的球(赤の点)の鏡像(緑の点)に向けて手球(黒の点)を突くと,図に点線で示したようなコースをたどって,1クッションで手球は的球に当たる。

 的球に当たるまでのクッション回数を増やしたい場合,鏡映の鏡映を作ってそこに向けて手球を突けばよい。例えば,2クッションならば,下図のように鏡の壁を2つ超えた先にある的を狙えばよい。

 一般にnクッションさせたいときはn回鏡映をさせたのちの像を狙えばよい。例えば3クッションの場合,それらの像は無限に展開された鏡の中では,下図の青色マスの中にあるから,標的としては12個がありうる。

 一般にnクッションしてから的に当てたい場合,狙うべき鏡映像が最大4n通りありうることは容易にわかるだろう。

 最後のグリフォンの問題は難問だろう。ボールや障害物は任意に小さくしてよいということだから,事実上点と考えねばならない。それでも,クッション回数が少ないうちは,鏡像を狙う各コースの途中に障害物を置けばその狙いを阻止することができる。だがクッション回数を増やすことを許すと,狙い筋もどんどん増える。例えば3クッション以内で当てるには1+4+8+12=25コースもの狙い筋があり,そのことごとくに障害物を置こうとすれば,当然25個の障害が必要になる。したがってグリフォンの戦略のツボは,1つの障害で複数の狙い筋を邪魔することである。例えば,1クッション以内で当てられることを阻止するには,下図のように障害物(青の点)を3つ置けば1+4=5個ある狙い筋のすべてを邪魔できる。

 そこで考えるべきことは,無限個ある鏡像への狙い筋すべてを邪魔できるような障害物の位置が有限個に絞れるだろうかということだ。

 ここからは,図だけで考えるのは骨が折れるので,座標幾何と代数に登場願おう。ビリヤード台の左下隅を原点とし,下辺のクッションをx軸,左辺のクッションをy軸とする直交座標を導入する。また,どちらの方向もビリヤード台の1辺の長さを1として,的球の座標を(a,b)とする。もちろん0≦a≦1,0≦b≦1である。このとき的球の鏡像たちの座標はどうなるだろうか? ちょっと考えればわかるが,左右上下の隣りの鏡像の座標は(−a,b),(2−a,b),(a,2−b),(a,−b)である。他の鏡像たちについても次々に考えていけば,その座標は(2m±a,2n±b)の形(mnは任意の整数)であることがわかる。さて手球の座標を(xy)とすると,これと鏡像とを結んだ線分の途中に障害物があれば,その狙い筋を阻止できるが,確実にその線分の途中にあると言える点がある。線分の中点だ。(xy)と(2m±a,2n±b)とを結ぶ線分の中点の座標は,(m+(x±a)/2,n+(y±b)/2)である。これらの点はビリヤード台の外にあるかもしれないので,もちろんそこに障害物を置こうというのではない。それらの点を鏡像に持つようなビリヤード台上の点に障害物を置くのだ。先と同様に考えると,座標が(m+(x±a)/2,n+(y±b)/2)という形の点の鏡像は座標が(r±x/2±a/2,s±y/2±b/2)という形(rsは整数)の点だけだとわかる。すなわち,これらのうち[0,1]×[0,1]に属する座標だけに障害物を置けばすべての狙い筋を阻止することができる。結局,選ぶのはxaybの正負の符号だけであり,rsは0か1かであるが,xaybの符号が決まればどちらかに自動的に決まるので,障害物を置かねばならない場所は24=16カ所だけだということになる。読者は,具体的なabxyの値について,障害物を置くべき16カ所を計算し,それがどの鏡像に対する狙い筋も消していることを確認してほしい。

 的球の鏡像と手球を結ぶ線分上の点は無数にあるから,上の証明のように特に中点を選ぶ必要はない。しかし,他の点を選んで,より少ない数の障害物ですべての狙い筋を阻止することは難しいように思う。

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