パズルの国のアリス

速乾式拭き掃除機(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 不思議の国のトランプ王宮では,またハートの女王が「首をはねよ!」を連発していた。前に,赤いバラを植えるように言われたのに,スペードの兵士たちが白いバラを植えてしまったことがあったが,失敗から学習しないのは,トランプ兵士たちの通弊である。今度は,逆に白いバラを植えるべき場所に,クラブの兵士たちが赤いバラを植えてしまった。以前の失敗では,スペードの兵士たちがバラの花に赤いペンキを塗ってごまかそうとしたことを,クラブの10が聞き出してきて,今回もその手でいこうということになった。ところが,赤いバラに塗るための白ペンキを用意していたクラブの兵士たちが,こともあろうに赤い絨毯が敷き詰められた大広間でつまずいて,白ペンキを一面にぶちまけてしまったというわけである。ペンキは広がって直径10mという巨大な円形の染みになってしまった。

 ハートの女王は怒り心頭に発し,今度ばかりは口癖の「首をはねよ!」を実行に移しかねない剣幕だ。兵士たちには,善後策を講じようにもいい知恵も浮かばないので,こういう場合の知恵袋である鏡の国の白騎士に急遽伝令を飛ばして相談した。

 白騎士の手もとにペンキの溶剤はあるが,それでペンキを溶かした後は,すぐに拭い取って乾燥させないと,絨毯が脱色したり斑に染みが残ったりしかねない。白騎士は,昔,実験的に速乾式拭き掃除機を開発したことがあることを思い出した。それを改造して,水の代わりにペンキの溶剤を使えばよさそうだ。

 早速,改造拭き掃除機を作って,隅の部分で実験したところ,うまく動作するようだ。どのようにして使うかというと,まず,拭きたい場所のスタート位置からゴール位置まで真っすぐにガイド線を張り,拭き掃除機をスタート位置にセットする。スタートボタンを押すと,ガイド線に沿って掃除機が動き,幅10cmの帯状にペンキがきれいに拭い取られるというわけである。けれど,このガイド線を張るという作業が意外に面倒だ。

 ともかく,幅10cmの帯を平行に100本置けば,直径10mの円は覆えるわけだから,その方針でペンキの染み抜き作業を始めようとしたら,クラブのエースが「待った」をかけた。「この拭き掃除機を隅っこのほうで使うと,ペンキの除去ができる部分は短いよな。もっと真ん中に近いところを通るようにガイド線を張ったほうが,たくさんペンキが拭えるぞ。うまくすると,100回もガイド線を張らなくてもいいかもしれない」。

 すると,クラブの2が反対意見を唱えた。「ガイド線を平行に張らないと,どうしたって掃除できる部分には重なりができるよ。その部分の二重の掃除は無駄になるだけだから,結局100回以上かかるんじゃないか?」

 読者の皆さんには,このクラブのエースの提案について考えていただきたい。簡単にいえば,幅10cmの帯(長さは任意)100本未満で直径10mの円を覆う方法があるかだ。そういう方法があればそれを示して,クラブの兵士たちの作業を手伝ってやってほしい。反対に,幅10cmの帯で直径10mの円を覆うにはどうしても100本必要というなら,そのことを証明していただきたい。

解答はこちらです