パズルの国のアリス

双子に負けるな! 新コーカスレース(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 「また新しくて面白いコーカスレースを思いついたわ」とドードー鳥が得意気に言った。集まっているのは,わけのわからない競走をやっては,その賞品をアリスにねだることが癖になっている連中ばかりで,思わず皆聞き耳を立てる。

 「今度のはね,平地を走るんじゃなくて,ほら,そこに見える山に登るの」。それを聞いて,聴衆は登山なんてウンザリという顔だが,ドードーはまるで気に留めていない。「大丈夫。早く登ったほうが勝ちというわけじゃないから。朝の10時にここを出発して,午後の4時に山頂の山小屋に着けばいいのよ。時間はたっぷりあるでしょ。道もいろいろとあるから,各自好きなコースを辿っていい。決めたコースを外れなければ,途中で引き返して寄り道したり,お昼を食べたり,昼寝をしたり,何でも好きにしていいわ。条件は2つだけ。朝10時に出発して午後4時には山小屋に着いていることと,決めたコースを途中で外れないことよ」。

 それでも,ためらっている面々を見て,「着いたら大宴会と温泉よ。いい計画でしょ。それで,その晩はそのまま山小屋に泊まるの。翌日は,前日と同じコースを通って下山する。このときも歩くペースはどうでもいい。条件は同じで,朝10時に出発して午後4時にここに着いていることと,コースを途中で外れないことよ」。

 アリスは外泊を許してもらえず,参加をあきらめたが,そんな自分がなぜ賞品をねだられなければならないのか不満顔だった。レースが終わってみると,面倒くさげに参加した者が多かっただけあって結果はさんざんだった。そもそも寝坊して出発が遅れたもの,途中での昼寝が長すぎて到着時間に遅れたもの,山道で迷ってコースを外れたものが続出した。下山のときも同様で,前日の宴会のせいで,寝坊したり体調を崩したりして,時間やコースを守れないものが大勢いた。結局,行き帰りとも条件を満たして,アリスが賞品として金平糖を渡すことになったものは,オウムとネズミのほかは鏡の国から飛び入り参加したトウィードルダムとトウィードルディーの双子兄弟だけで,合計4名だった。

 グリフォンにその話をすると,グリフォンは妙なことを言い出した。「ふーん,そうするとネズミは,行きと帰りの途中,ちょうど同じ時刻に同じ標高の地点にいた瞬間があることになるな。オウムや双子のそれぞれもそうだ」。読者にはまずこの言葉の根拠を考えていただきたい。

 アリスは,グリフォンからその理由を聞いて納得したが,そういえば,双子が次のように自慢気に話していたことを思い出した。「俺たち2人は,それぞれ別のルートを行ったんだけど,2人で連絡しあって出発してから目標地点に着くまでどの瞬間でも同じ標高の場所にいようと決めたんだ。そういう条件付きで今度のレースをクリアできたので,大満足だね」。それを聞いて今度はグリフォンが首をかしげた。

 「2人のコースが単調な上りだけだったら,スピードを調整すればそんなことも可能だろうけど……たまたまそうだったのかな?」と,しばらく考えていたが,「あ,そうか。コースを逆戻りしてもよかったんだね。なるほど。そしたら,2つのコースに上り下りがあったり平らな部分があったとしても,進むスピードや向きを変えることで,いつも同じ標高にいるという条件を保って目的地に到着できるな。あ,どちらかのコースに出発点より標高が低くなる地点や目的地より標高が高くなる地点がある場合は,無理かもしれない。それに,出せるスピードに限界があってもだめかもしれないが,そうでなければどんな2つのコースでも,2人で歩調を合わせれば,必ずうまくやる方法がある」。

 さて,読者には,次にグリフォンのこの言葉の根拠も考えていただこう。

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