パズルの国のアリス

白の騎士の無限階段(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 鏡の国の白の騎士がまた奇抜な発明をしたと聞いて,好奇心旺盛なアリスは,ハンプティダンプティと連れ立って見学に来た。

 今度の発明は,見た目はエスカレーターのような装置で,階段が延々と続いている。ハンプティは最上段から覗くように装置を見下ろして,どこまでも続く様子に全身を緊張させている。確かに,ハンプティが一歩でも足を踏み外したりしたら,その卵形の体は階段を延々と落ちて行き,どこかで粉々になってしまうだろう。

 白騎士はハンプティの恐々とした様子を見てご満悦のようだ。「足を滑らせたりせんように気をつけてな。今度の装置は,無限の長さにしたので,さすがにわし1人では作れんかった。どの段の仕組みも同じだから,無限国のモグラたちに設計図を渡して1匹に1段ずつを作ってもらって,それを繋いだのがこれじゃ」。

 「すると,この階段はどこまでも続いていて,終わりはないのですか? いったいどういう目的でこんな装置を?」とアリス。

 「遊びじゃよ,遊び。各段は0,1,2の3段階のエネルギーレベルが取れるように設計してある。そこでこの特殊な仕掛けをしたボールを階段のどこかに落とすのじゃ。すると,落ちた段のエネルギーレベルが0か1なら,その段はボールからエネルギーを吸収してレベルが1つ上がる。一方,ボールはエネルギーを失い,1つ下の段へ落ちていく。また,落ちたのがエネルギーレベル2の段であれば,ボールは,逆にその段からエネルギーを奪い,1つ上の段に跳ね上がる。反対にその段のエネルギーレベルは0に落ちる。こういうことを繰り返して,ボールは上へ行ったり下へ行ったり装置上を動き回るというわけじゃ」

 「最上段のエネルギーレベルが2のときに,そこにボールが落ちたら?」

 「おうおう,そうじゃ。そのことを言わんとな。その場合もボールが段からエネルギーを奪うのは同じじゃが,さらに跳ね上がろうにもそれより上の段はないのでそこで終わりじゃ。まあ,言ってみれば,双六の上がりみたいなものかのう」

 アリスたちは,いろいろな段にボールを落として試してみた。どうやら,どこに落としてもボールは,昇り降りを繰り返しながら,次第に階段を下って行き無限のかなたに消えてしまうか,最上段まできて「上がり」になってしまうかのどちらかになり,階段の一定範囲にいつまでもとどまるということはないらしい。読者にはまず,どうしてそうなるかを考えていただこう。

 また,あるとき落としたボールが「上がり」になったとし,そのままの状態の装置に次のボールを落としたとする。このとき,次のボールはどこに落としても無限のかなたに消えてしまうことを証明していただきたい。つまり,2つのボールを順次落としたとき,その2つともに「上がり」になることはない。

 余裕のある読者は,一般に落としたボールがどういう場合に「上が」り,どういう場合に無限に下降していくかを考えていただくと面白いだろう。

 また,エネルギーレベルが3段階でなくn段階の場合に同じような装置で何が起こるか考えていただきたい。その場合,レべルn−2以下の段に落ちたボールはその段のレベルを1つ上げて下の段に落ちていくが,レベルn−1の段に落ちたボールはその段のレベルを0に下げて上の段に跳ね上がるものとする。n>3の場合も面白いが,n=2の場合も意外に難しい。

解答はこちらです