パズルの国のアリス

シャイで人見知りな一匹狼たち(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 チェシャ猫は,首や手足だけでいろいろな場所へ飛んでいけて,とても便利だ。おかげでアリスも,チェシャ猫に頼んでいろんな世界を訪問することがある。今は,小さな惑星を見学しているところだ。

 「この惑星は,全体がフェンスできちんと仕切られていて,無限モグラ国のように各地所には狼が1匹だけで暮らしているんだ」とチェシャ猫。

 「狼……ですか」とアリスがおびえた声をあげると,チェシャ猫は「ああ,心配ないよ。ここの狼たちには,キミたちの物語に出てくるような乱暴者はいないから。むしろとても恥ずかしがりやで,われわれと目を合わすのも嫌がるくらいだよ。……ああ,でもそろそろだな」とどこからか突然現れた手(前足)の中の懐中時計を見る。

 するとまもなく,各地所の中に1軒だけ立っている家からそれぞれ狼が出てきて,フェンスに沿って自分の地所内をゆっくり散歩し始めた。

 「ここの住人たちは,毎日決まった時間にいっせいに散歩を始め,フェンスに沿って自分の地所内を一周する習慣があるんだ。それも必ず反時計回りにね。フェンスから離れて見ていたほうがいいね。われわれがいると,嫌がってなかなかこちらに来ないから」とチェシャ猫。

 アリスたちがフェンスから離れると,その地所の住人は,だんだん近づいてきつつあったが,突然,歩調を緩めた。「あれ,まだあたしたちを嫌がっているのかしら。もうフェンスからは随分離れたと思うけど……」。

 「いや,それも多少はあるかもしれないが,違うね。ごらん」とチェシャ猫は近くのフェンスの先を指さす。見ると,その向こう側を隣の地所の住人が歩いてくる。「フェンス越しとはいえ,お隣さんと顔を合わすのがいやなのさ。どう挨拶してよいかもわからないらしい。あそこにフェンスが三叉になっている箇所があるだろう」と2匹の狼の先にある地点を指す。

 「あの地点を過ぎるとお隣さんはこちらのフェンスから離れていくので,それを待ってからそこを通過しようと考えて,のろのろ来てるのさ。ほら,お隣さんも,同じように考えたらしいよ。急に歩調が速くなっただろう」

 こうして,2匹の狼はフェンス越しに顔を合わせるのをなんとか避けることができた。

 「ふーん,人見知りするというのも,結構頭を使うのね。こういうやり方でいつもうまく顔合わせを避けているのかしら」

 「いや,そうでもないらしい。地所の配置がどうなっているかや,各狼がどこからスタートするかによるのかもしれないけど,毎日,どこかで2匹のお隣さんが望まない遭遇でばつの悪い思いをしているようだよ」。

 読者の皆さんには,この望まない遭遇を避けられるような地所の数とその配置,さらにその場合に各狼がどこから散歩を開始すればよいかを考えていただきたい。あるいは,地所の数・配置と出発点にかかわらず,どこかで遭遇が起こることが避けられないものならば,それを証明していただこう。念のため,この惑星には海などはなく,狼の住んでいない地所はないこと,また各地所は1つながりのフェンス(閉曲線)で隣と仕切られていることを明記しておこう。

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