パズルの国のアリス

進化した8の字ミミズの逆襲(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 アリスは,チェシャ猫につれられて例のモグラたちがいる無限国(2011年2月号)を見学訪問していた。2012年8月号で紹介した広場の造園工事も終わり,そのとき植えた「四角芝」は順調に生育しているようだ。

 最初の訪問のときは,意地の悪そうな声だけが聞こえたボスモグラも,多少なじみになったので挨拶に出てきた。「皆が憩える公共の広場もなかなかよいものだのう。もっと早くこういう広場を作ればよかったという声も結構ある」。

 「そうでしょう」とアリスは答えながら,「それでも,うちの別荘を建てさせてくれるような親切心はどうせないのよね」と内心思う。

 モグラは,そんな心のうちには気づかぬ風情で,「ここはよいのだが」とチェシャ猫に相談を持ちかける。「ほら,われわれのビタミン補給源になっていた8の字ミミズがいたじゃろ。あいつらが悪性の進化をしおって,モグラ国のそこかしこに住み着き,病原体を撒き散らしたりいろいろと悪さをしでかすんじゃ」。

 「え,あんたたちは無限匹いるんだから,1モグラが1ミミズを退治するということで簡単に始末がつくんでは……」とチェシャ猫。

 8の字ミミズとは,体が太さ0の輪2つからできている奇妙な生き物で,大きさは様々だ。でも,確かアリスの記憶では,平面上に重ならずに住めるのは可算無限匹までなので,モグラと1対1の対応がつくはずだった。

 「ところがじゃ」とボスモグラ。「この進化というのが曲者で,きゃつら形を少し変えおったのだ。輪の1つが切れてギリシャ文字のαみたいになったのがいるし,さらにもう1つも切れてχみたいなのもいる。挙句にはχの腕が1つ取れてしまい,λみたいな形のもいる始末じゃ。平面上で重なることがないのは相変わらずだが,こうもいろんな形やサイズのがいると,ひょっとして非可算無限匹でも平面に重ならずに住めるのではと思えてきてのう」。

 読者は,ボスモグラの疑問に答えてやっていただきたい。疑問を数学的に簡潔に述べるなら,「ユークリッド平面上にαやχやλなどと同相な図形を重ならずに非可算無限個描くことができるか」ということだ。あるいは,αは駄目でも,λだけなら非可算無限個を描けるという例があるだろうか。

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