パズルの国のアリス

懸賞付き座席番号(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 不思議の国と鏡の国との合同演芸会は,自分や身近な人がそれぞれの特技で腕を振るうから,とても人気があり,定員1000人の会場はいつも満席に近い。

 ある年,出演した人が賞品をもらっているのを見て,あべこべが大好きな赤白のチェスの女王たちが,客席の観客たちにも何か景品があるべきだと言い出した。その景品は,当然アリスか観客自身かトランプ王室から出るべきと考えているようだったが,自分たちが言い出した手前,そう虫の良い話が通るはずもなく,結局,トランプ王室とチェス王室から1つずつ出すことになった。

 問題は,2つしかない景品を誰に渡すかだ。あまり作為的になってもいけないので座席番号だけで決めようということになったが,偶然が結構作用してしかもすぐには当選者がわかりにくい方法はないかとグリフォンに相談したところ,2人を同時に決められる次のような案が出てきた。ある2人の座席番号を abab)としよう。その和abと差baという番号の座席のどちらもが空き座席だったときに,abに座っていた者を当選資格者にしようという案だ。たとえば座席 1番と3番が空席でなかったとして,4(=1+3)番と2(=3−1)番が空席であれば,1番と3番に座っていたものは当選資格を持つというわけだ。座席1番と2番のように差が2−1=1となり自身の座席番号になるようならば,それは空席として扱い,和1+2=3だけが空席であればよい。また座席500番と800番のように和が 1000番を超えてしまう場合もその座席は空席として扱い,差800−500=300 だけが空席であればよい。当然,有資格者のペアが複数組あることもあろうが,会場はかなりギッシリ詰まっており,自分が有資格者であるかどうかの判定は簡単ではないから,最初にそのことに気づいて手を挙げた者とそのペアに景品を渡そうというのだ。

 「え,でも,当選資格者がいればそれでいいでしょうけど」と,それを聞いたアリス。「もし誰もいなかったら,せっかくの景品が無駄になってしまうわ」。

 すると,グリフォンはニヤリとして,「大丈夫。自分が有資格であることに気づかないボンクラがいたらしょうがないけど,有資格者がまったくいないということはないさ」。

 一体,このグリフォンの自信にはどういう根拠があるのだろうか。読者にはまずそれを考えていただきたい。

 さて,実はこの年の演芸会には,例のマハラジャ出身ではないかと噂されるお大尽(2013年5月号7月号)が招待されて来ており,来賓席からこの景品授受を見ていて,自分も是非とも景品を出したいと言い出した。その景品とは,こともあろうに巨大な金塊で,しかもそれを分割してなるべく大勢に配りたいと言う。といっても,客席全体に均等に配るのは,あまりに芸がなさすぎるので,これもグリフォンに相談したところ,次のような案が出てきた。先と同様に2人の座席番号をabとする。このときabが1000を超え,かつabが互いに素(abの最大公約数が1)のとき,この2人に金塊全体の1/abずつを与えようというものだ。もちろん,このような番号ペアはたくさんあるので,そのようなペアのことごとくに対してこの金塊分配を行う。

 「うーむ。2人の番号の和は1000より大きいということが条件か。なるほど。すると1ペア当たりの配分量は少なくなり大勢に配れるのう。それにしても,そういうペアがたくさんいた場合,資金不足になるということはないかの。それでもわしはかまわんのだが,いかんせん今は持ち合わせておらん。それにあんまり余ってしまってもつまらんし……」

 これに対してグリフォンは「資金不足になることは絶対にありませんね」と太鼓判を押し,「余ることはあるかもしれませんが」と座席を見回し「これだけ客席が埋まっているようなら,その量は大したことはないですね」とえらく自信ありげだ。

 読者への次の問題は,この「資金不足にはならない」というグリフォンの言葉の根拠を考えていただくことと,1000座席のうちn座席が埋まっていた場合に,観客に配られる金塊の総量がどのくらいになるか,その期待値を見積もっていただくことだ。

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