パズルの国のアリス

集え! 賢者たちよ (問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 イモムシ探偵局は,不思議の国のトランプ王室からの資金援助を得て,推理コンテスト大会を主催することになった。不思議の国と鏡の国はもちろん,その他の国々からも,自薦他薦を問わず賢者と称する人たちを集めて,その推理力を競おうというわけである。

 大会委員長という大役をもらって満足のイモムシは,ニマニマとした笑顔がこぼれてしまって(自分ではあると思っている)威厳が損なわれてしまうことのないように,煙管の煙にその顔を隠すのだけに必死なようだ。一方,探偵局のただ一人の調査員であり実質的にコンテストを取り仕切らねばならないグリフォンは,問題作りを含め大会業務を一手に引き受け大忙しだ。アリス,チェシャ猫,スペードのエースたちはもちろん,あまり頼りにならない気違いのお茶会3人組の助力すらあてにしている。

 幸い,問題を整理した結果,必要なのは,番号のついた帽子をたくさんと完全に仕切ることのできる部屋をいくつかだけで済むようにしたので,大会は何とか順調に進行した。コンテストでは,基本的に,賢者たち何人かを部屋に入れて番号つきの帽子をかぶせる。自分にかぶせられた帽子は見えないが,同じ部屋にいる他の賢者たちの帽子の番号はわかる。また,番号がすべて正の整数だということは誰もが知っていて,部屋の中の会話には全員が聞き耳を立てているとする。

 さて,読者には,いくつかの部屋の様子を紹介し,問題を考えていただこう。

 まず,ウォーミング・アップである。最初の部屋では,3人の賢者(A,B,C)を入れて,「3人のうち少なくとも1人の帽子の番号は偶数です」と伝えた。そして「Aさん,自分の番号が奇数か偶数かわかりますか?」ときくと,「わからない」というのが答えだった。「では,Bさんはわかりますか」ときくと,やはり「わからない」というのが答えだった。「では,Cさんは」ときくと,「わかります」と答えたが,Cは偶数だろうか奇数だろうか。また,A,Bの奇偶性について何かわかるだろうか。

 次の部屋では,大勢の賢者を入れて「少なくとも1人の番号は偶数です」と告げ,「自分が偶数か奇数かわかった人はいますか?」ときいた。このとき手を挙げるものはなかったので,10秒後にまた「わかった人は」ときくと,やはり声なし。この問答を10秒ごとに繰り返し,20回目に聞いたとき,「ハイ」という声とともにいっせいに手が挙がった。手を挙げたのは何人だろうか。

 その次の部屋に入ったのは3人(D,E,F)だ。「2人の番号の和がもう1人の番号になっています」と告げ,順繰りに自分の番号がわかるかをきいていった。

 D:「わかりません」
 E:「わかりません」
 F:「わかりません」
 D:「わかりません」
 E:「わかりました。26です」

Eの答えは正しかったが,読者にはDとFの番号がわかるだろうか。

 ここで紹介する最後の部屋には2人の賢者(PとS)が入った。「Sさんの番号は2つの数abの和abで,Pさんのは積abです。abも2以上で100以下の整数です」と告げ,「さてPさん,Sさんには自分の番号がわかると思いますか」ときくと,Pはしばらく考えたあと「いや,Sさんにそれがわかる可能性はありません」と答えた。すると,Sがうれしそうな顔をしたので,理由をきくと「今の答えで,私の番号がわかりました」という。すると今度はPが「それなら,私も自分の番号がわかりました」という。SとPの番号はそれぞれいくつだろうか?

 もちろん賢者たちは,互いに完璧な論理をもって答えることを前提に行動している。実際,テストに落第するものはなく,コンテスト自体は意味のない結果に終わったのだが。

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