パズルの国のアリス

カメレオンたちの 体重測定(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 アリスは,久しぶりに不思議の国の野原でくつろいでいた。すると,風もないのに前方の緑の草むらが妙にゆらゆらと揺れたような気がした。「前にもこんなことがあったような」と考えていると,突然,目の前から声がした。「こんにちは,アリスさん,お久しぶりです」。

 よく見てみると小さな緑の生き物が立っている。2009年11月号のカメレオンだ。「わ,ウィルさん。驚いた。隠れ方,ずいぶん上手になりましたね」。「そう,たいしたもんだろ」と今度は頭上から声がした。見ると,笑った口と目だけが宙に浮かんでいる。チェシャ猫である。

 「この子たちは,もう2匹1組でなくとも,色を変えることができるようになったんだ。それにみんな大きくなったので,体重測定をしてきたところさ」と言って,合図を送ると,さっきまで草むらにしか見えなかったところに,赤・青のカメレオンが一斉に姿を現した。それぞれ10匹ずつで,ウィルを入れると全部で21匹もいる。

 「うわ,こんなに」とアリスが驚いているのを見て,「ん,ちょっと面白いことを思いついたぞ」とチェシャ猫は言い,いったん姿を消すと,今度はどこから持ってきたのか大きな天秤とともに全身で出現した。そして,赤のカメレオンは左の皿に,青のカメレオンは右の皿に載るように言う。面白いことに,全員が載り終わると天秤はピタリと釣り合った。

 「おや,赤グループと青グループの合計体重は同じなんですね」とアリスが言うと,「それだけじゃないよ」とチェシャ猫。

 「ウィル以外の1匹を選んでごらん」と言うので,アリスが,右端にいた赤のカメレオンを指さすと,チェシャ猫はその子に緑になるように言い,ウィルを含めた残りのカメレオンから何匹かを選んで指示して色を変え,やはり赤・青を10匹ずつにした。そして,赤が左,青が右の皿に載ると今度も釣り合う。

 アリスがさらに別の1匹を選ぶと,チェシャ猫は残りのカメレオンたちを巧妙に赤・青10匹ずつに振り分け,同様に釣り合いを取る。アリスがちょっと考えてから「ははあ,わかったわ。この子たちはみんな同じ体重なんでしょ」と推測を述べると,チェシャ猫は例のいたずらっぽい笑いを浮かべ「賭けるかい?」

 そう言われると自信のないアリスだが,この辺りで読者への問題である。「全員が同じ体重」というこのアリスの推測は正しいだろうか? それとも,21匹の体重をうまく調整すると,同じ体重でなくともチェシャ猫のやったようなことが可能だろうか? 簡単のため,21匹の体重はすべて有理比を持つことにする。つまり,ある小さな重さを単位として量ると21匹全員が整数の体重を持つものとする。余裕のある読者は,この有理比を持つという条件が無い場合にどうなるかも考えて頂きたい。もちろん,不思議の国の天秤は非常に敏感で,どんなに小さな重さの差をも検出することができる。

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