パズルの国のアリス

六角形タイルの悪夢(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 不思議の国や鏡の国では,大概の左官仕事は,セイウチを助手に使って大工が請け負っている。ところが,やたらと妙な注文が多いのがこれらの国での左官仕事の特徴で,先月に引き続いて,今月もタイル貼りの難問に取り組んでいただこう。

 今度の仕事は,正六角形を単位とする面のタイル貼りだ。タイルを貼る壁は,下図のように単位正六角形を三角形状に配置した形をしている。1辺は六角形を単位として数えて6個分である。

 また,タイルには,下のAのような単位六角形を3枚つなぎ合わせた形のものを使う。ただし,向きを変えて使ってもよいから,Bのように置くこともできる。

 「ふーむ。そもそも1枚のタイルが六角形3つ分なのだから,タイル壁の面積が六角形の3の倍数分でないと無理だな」とセイウチ。確かにその通りだ。ここで読者にはウォーミングアップとして,三角形状の壁領域は, 1辺が単位六角形のn枚分とすると,n≡0(mod 3)またはn≡2(mod 3)でないと,セイウチの条件を満たさないことを確認していただきたい〔abmod d)は,abdで割ったときの余りが等しいことを示す〕。

 「で,この場合は,1辺が6で面積は21だから,貼れてもよいわけだ」とセイウチ。「では,こう置いてみると……」と色々と試してみたが,しばらくして「うーむ,どう考えてもこれは無理だな」。

 「そうなんだ」と大工。「ついでだから1辺nの色々なサイズの三角形領域で考えてみた。n=1は当然ダメ。n=2は領域とタイルの形が同じだから,もちろんOKだが,それ以外はどのサイズの領域もうまくいかない。ところが,ほとんど諦めかけていたのに,n=9の場合を考えてみたら,ほれこの通りだ」(下の左図)。

 「え,それじゃ,n=8の場合だって,なんとかなるんじゃないのか?」とセイウチ。「それがな,n=3,4,5,6,7,8の場合はどうしてもうまくいかない。n=10の場合は,10≡1(mod 3)で,領域面積が六角形55個分になるのでダメなのだが,次のn=11,12の場合はうまく貼れる。それで気をよくして,nが9以上ならn≡1(mod 3)以外はうまくいくかと思うと,n=14はいいが,n=15,17,18と軒並みに失敗した。あまりのわからなさに,六角形が夢の中に出て来て,ダンスをしている始末だよ」。

 実は,この大工の観察は正しい。厳密にいうと,三角形領域が2番目の図のA,Bのようなタイルで貼れるための必要十分条件は,n≡0,2,9,11(mod 12)というものなのである。読者には,次のウォーミングアップ問題として,n=11, 12, 14の場合の貼り方を考えるとともに,一般にn≡0,2,9,11(mod 12)の場合にうまくいくという証明を与えてほしい。最後にこれは相当の難問だろうが,nが上の場合以外はタイル貼りができないという証明を考えてほしい。

 また,上の問題を考える上で参考になるかどうかわからないが,上の右図のEのように六角形が3つ一列に並んだ形をしているタイルで,三角形領域を埋め尽くせるかどうかを考えるのも面白いだろう。この場合,向きを変えてタイルをF,Gのように置くこともできる。

解答はこちらです