パズルの国のアリス

タイル壁の修復(解答)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 この問題の元になっているのは,「カリソンの問題」と呼ばれているもので,フランスのプロヴァンス地方のお菓子の形にちなんで,そう名づけられたらしい。正三角形を2つ合わせた菱形のタイルを使うことを除けば,まさに今回の問題と同じだ。

 この問題に対しては,本コラムの大先輩である一松信先生が読者として解答をお送りくださった。もちろん,一松先生はカリソンの問題についてもご存じで,どう貼っても一定枚数のタイルセットが必要なことが証明できると書いておられる。

 まったくその通りで,カリソンの問題は「言葉がいらない」証明を持つ問題としてしばしば引き合いに出され,実際,証明としては下のような図が描かれているだけのことが多い。

 この解答から,どんなことを読者が読み取るかを期待しているのかというと,例えば,次のような論法であろう。上図は,元の問題の1/10のサイズの領域を試しにタイル貼りしたものだが,この図は,3×4×2の倉庫の一部に段ボールの箱を積み上げたかのように見えないこともない。この倉庫を真上から見れば,赤のタイルだけが見え,その枚数は明らかに3×4=12である。また,左から見れば青のタイルだけが2×4=8枚見える。右からではグレーのタイルだけが2×3=6枚見える。使われているタイルは,これで全てである。模様をどう変えようと,結局積み上げる段ボールの数と積み方を変えたにすぎないから,使われるタイルの枚数は,いつでも青が8枚,赤が12枚,グレーが6枚だ。元の問題も同様で,倉庫のサイズが30×40×20になったと考えれば,青のタイルは20×40=800枚,赤のタイルは30×40=1200枚,グレーのタイルは20×30=600枚使われていたことがわかる。

 このような図による証明で納得してしまえるなら,それでよいが,どういう模様もこのような段ボールを積み上げたような図になると言われても,筆者には少し納得しがたい面がある。というわけで,もう少し突っ込んで調べてみよう。

 修復領域の各辺を上のように名づけよう。タイルは回転させたりせずに使うのだから,垂直な辺aに沿って貼るタイルは青かグレーのどちらかである。aと重なるそのタイルの辺をa0とすると,タイルは平行四辺形だから,a0の対辺a1はa0と長さが等しく平行である。次にa1の右にもタイルがあるが,これも青かグレーのどちらかであり,そのタイルに関するa1の対辺a2もまた長さが等しく平行である。こうして,右上のように辺aから右に向かって並ぶ青かグレーのタイルの帯が見つかり,それは辺a’ に達して終わる。

 問題の領域の場合,aの長さは青やグレーのタイルの縦の辺の長さの20倍であるから,このような帯が上から下へ20本並んでいる。タイルには重なりがないから,帯にも重なりがない。次に,辺bに沿って貼られるタイルを考えよう。このタイルは赤かグレーのどちらかである。上と同様の考察により,bからb’ へ至る赤かグレーのタイルによる帯が30本見つかる。さて,このbb’ 群の帯の1本と先の aa’ 群の帯の1本とは,明らかに少なくとも1カ所で交差する。その交差点のタイルは共通だからグレーでなければならない。計20本のaa’ 群帯と計30本のbb’ 群帯は,全体で20×30=600カ所で交差し,そこのタイルはグレーだから,グレーのタイルが少なくとも600枚使われていることがわかる。同様にcからc’ へ至る赤青タイルの帯を考えると,青のタイルが少なくとも20×40=800枚,赤のタイルが少なくとも30×40=1200枚使われていたことがわかる。

 最後に,タイルには重なりがないので,面積を考えれば,それ以上にはもうタイルの必要がないことがわかる。

参考にした本
Mathematical Puzzles:A Connoisseur's Collection(2004),
Mathematical Mind-Benders(2007) P. Winkler。
邦訳は『とっておきの数学パズル』(2011年),『続・とっておきの数学パズル』(2012年),ピーター・ウィンクラー著,坂井公・ 岩沢宏和・小副川健訳,日本評論社。

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