パズルの国のアリス

交差しない弾道(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 スペードとハートの兵士たちが合同演習をするという。アリスがいつもはクローケーグラウンドとしてしか使われていない練兵場に行ってみると,ハートとスペードの兵士部隊各10人だけでなく,王侯たちも集まってガヤガヤとやっている。

 やがて演習が始まり,各部隊の司令官を務めるジャックの号令一下,兵士たちはグラウンドに散ったが,方向や距離はほとんどでたらめだ。各兵士が十分離れたころに,ハートのジャックが拡声器で声を張り上げる。

 「全員が全員を見通せるか? 重なっているようなことはないな。よおし」と言って右手を大きく挙げると,ハートの兵士はそれぞれ銃を構え,スペードの兵士の1人を狙う。ジャックの右手を振り下ろす合図とともに,一斉に射撃した。

 怪我をしないように,銃に込められているのは当たっても弾けてインクが飛び散るだけの弾丸だが,アリスが感心したことには,全員命中である。しかも,1人が2発の銃弾を受けることもなく,10人のスペードの兵士が1発ずつ銃弾を受けて全滅という筋書きだが,このトリックは簡単で,エースはエース,2は2を狙うというふうにあらかじめ取り決めてあったらしい。

 ハートのジャックは「どんなもんです」という顔で王侯たちを見た。次はスペードの番だということで,スペードのジャックに指揮権を渡そうとすると,そこで,例によってハートの女王の気まぐれが始まった。

 「ふうむ。よく訓練してあるようじゃの。しかし,気に入らんことが1つある」

 「へ?」2人のジャックが互いの顔を見合わせると,ハートの女王はスペードのジャックに言う。「1人が1人を倒すのはよい。気に入らんのはその弾道じゃ。今の射撃では,上から見ればいくつかの弾道が交差しておった。次は,スペードの射撃番じゃろうが,今の位置のままでよいから弾道が交差しないようにして,ハートの兵士を全員倒してみよ。さもないと打ち首じゃ」。

 「弾道なんかどうでもよい」という言い分はハートの女王には通用しない。ジャックが困っているのを見て,スペードのエースがアリスを手招きしていた。

 読者への問題は,そもそも女王の言うように,上から見たとき弾道が交差しない狙い方があるということの証明である。また,そのような狙い方を実際に発見するために,スペードのエースがアリスを伝令としてジャックに授けた方法はどんなものだったろうか。もちろん,ジャックは,全員の位置を知った上で,各スペード兵士がどのハート兵士を狙うべきかについて細かく指示を出すことができる。

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