パズルの国のアリス

ヤマネたちの安心領域(解答)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

 ルーローの三角形の面積は,簡単な計算で求められる。正三角形と月形の1つを合わせた図形は半径100mで中心角60°の扇形だから10000π/6m2である。また,正三角形の面積は明らかに2500√3m2だからルーローの三角形の面積は,

 3×10000π/6−2×2500√3=5000(π−√3 )≃7048(m2

だ。一方,直径100mの円の面積は502π≃7854m2だから,1割以上大きい。
 さて,実際,直径100mの円は,ヤマネと姪たちがどこにいても互いの姿を確認できる領域の中で面積最大のものだ。その証明は簡単だが,思いつくにはヒラメキが必要だ。『リトルウッドの数学スクランブル』にその証明の1つがあるが,おそらくリトルウッド自身によるものだろう。他の証明もあるかもしれないが,このリトルウッドのものよりエレガントなものというのはちょっと考えにくい。少し残念なのは,証明に大学初年級の積分を用いることだが,比較的基本的な知識なので大目にみていただこう。
 その中のどの2点も距離が100mを超えない任意の領域D を考えたとき,D の面積が直径100mの円の面積2500πm2を超えないことを示せばいい。D 内でもっとも離れた2点PとQを任意に選んだとき,その距離がちょうど100mとしても一般性を失わない。Pを原点にしてQ方向にx軸を取った座標を設定する。D のどの点も,Qからの距離が100m以内であるから,そのx座標は負ではない。つまり,D の点を原点Pから見たときの方角がx軸となす角(偏角)は−π/2以上π/2以下である。
 さて,偏角がΘ D の点の中で,Pから一番遠いものをRΘ )とし,Pからそこまでの距離をrΘ)とする。すると,D の面積S は,極方程式で与えられた図形の面積公式により


 

を満たす。
 ここまでは,思いつく人も多かろうが,次の発想が見事だ。積分をΘ の符号によって2つに分け,簡単な変数変換をしてから,再び組み合わせるのだ。


 

 ピタゴラスの定理によりrΘ 2rΘ −π/2)2RΘ )とRΘ −π/2)の距離の2乗に等しく,1002=10000m2を超えることはない。したがって


 

が得られる。

参考にした本:
Mathematical Puzzles: A Connoisseur's Collection(2004)
Mathematical Mind-Benders(2007) P. Winkler著

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