パズルの国のアリス

可愛いが油断のならないヤマネの姪たち(問題)

坂井 公(筑波大学) 題字・イラスト:斉藤重之

アリスが久々に芋虫探偵局へ行くと,ヤマネが相談に来ていた。聞いてみると,次のような悩みだった。

ヤマネの兄夫婦には7匹の娘がいる。ヤマネは,その姪たちをとても可愛いがっていたが,今度,兄夫婦が長期に外国へ出張することになり,世話を頼まれた。といっても,普通の生活の面倒は,姪たちと一緒に残る家政婦がみるので,ヤマネが頼まれたのは小遣いの管理だけだった。それでも,姪たちの世話ができるのは,ヤマネにとってはうれしいことだ。7匹の娘は,生まれた曜日にちなんで,サンデイ,マンデイ,チューズデイ,ウェンズデイ,サースデイ,フライデイ,サタデイという名であったが,いつのころからか,自分の生まれた曜日に銀貨1枚の小遣いをもらうという習慣が定着していた。ヤマネが頼まれたのは,預かっている銀貨のストックから,しかるべき娘にしかるべき曜日に1枚渡すということだけである。兄は,ヤマネの手元にある銀貨の枚数を正確に把握していて,ストックがなくなった(はずの)日の翌朝にいつも数十枚の銀貨が届く。

娘たちは互いによく似ているが,ヤマネが可愛がっている姪たちを見間違うことなどないし,曜日もわかる。しかし,最近のことを覚えているのが苦手というヤマネにとって,問題は,その日小遣いを渡したかどうかを覚えていられないことだ。ヤマネは姪たちをこよなく愛していたが,「叔父の心,姪知らず」で,姪たちは人のよい叔父をだますことに,大きな罪悪感は感じていないようだ。日曜日に小遣いをもらったサンデイちゃんが,その1時間後にまた,そしらぬ顔で「おじちゃん,おこづかいちょうだい!」と現れたとき,その嘘を見抜くだけの記憶力には自信がない。渡し過ぎてしまうと, ストックがなくなってから次が来るまでの小遣いをヤマネ自身が負担する羽目になる。

いずれにせよ,預かった銀貨を入れておく金庫は必要だから, ヤマネは小部屋7つに分かれている金庫を特注して作ってもらい,各小部屋に「Sun」「Mon」「Tue」「Wed」「Thu」「Fri」「Sat」というラベルを付けた。それぞれの小部屋は,中が見え,レバーが付いていて,鍵を差し込んでそのレバーを引くと銀貨が1枚だけ出てくる仕掛けになっている。

33 枚の銀貨のストックが着いた日,その日は月曜日だったので,「Mon」の小部屋から順繰りに小部屋に銀貨を1枚ずつ入れていったところ,当然だが,各小部屋の枚数は「Sun」から順に,4-5-5-5-5-5-4になった。マンデイちゃんが現れて,小遣いを要求したので,「Mon」の小部屋から1枚取り出 して渡すと4-4-5-5-5-5-4となり,隣の「Tue」より枚数が少なくなった。これで月曜日の分はもう渡したことがわかる。

ヤマネは, これで安心していたが,金曜日になって破綻した。フライデイちゃんに小遣いを渡したあとは,金庫の状態が4-4-4-4-4-4-4となり,「Fri」の 枚数が隣の「Sat」より少ないということがないので,その日,小遣いを渡したかどうかわからなくなったのだ。もちろん,全小部屋の枚数が同じになるのがいつも金曜日ならば,このような状態を見たのが金曜日か土曜日かで,小遣いを渡したあとかどうかが判断できる。しかし,新しい銀貨のストックが届くのは, いつも月曜日とは限らないし,届く枚数が33枚と決まっているわけでもない。

さて,この金庫を用いて,ヤマネがその日に姪に小遣いを渡したかどうかを間違いなく判断できる仕組みを作れるだろうか? ただし,次の条件がある。

●銀貨のストックは,完全になくならないと次が届かないし,届いたときには全部を金庫に入れてしまわないと不安だ。
●届くストックの枚数は不定である。
●いったん金庫に入れた銀貨は,取り出した時には姪に与えるだけとし,別の小部屋に入れ直すなどという面倒なことはしたくない。
●ある曜日に渡す銀貨は,必ずしもその「曜日」の小部屋から取り出す必要はない。
●もちろん,記憶装置として,各小部屋に入っている銀貨の枚数以外を使うのは反則である。

アリスと芋虫は,探偵助手のグリフォンの力なしでこの問題に取り組み,苦心惨憺の末に解決方法を見つけ,なんとかヤマネにアドバイスできた。あとで,その話をグリフォンにすると,グリフォンはしきりに感心していたが,しばらく考えたあと,「金庫の小部屋7つは多いな。小部屋の数はもっと少なくても済む方法があると思うよ」と言った。先の問題が解けた読者は,このグリフォンの挑戦に取り組んで,なるべく小部屋の数を少なく済ます方法を考えていただきたい。

 

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