パズルの国のアリス

可愛いが油断のならないヤマネの姪たち(解答)

坂井 公(筑波大学)題字・イラスト:斉藤重之

 まず,筆者がこのコラムを書く上でパズルの種本に使っているウィンクラー(Peter Winkler)の「Mathemat ical Puzzles : A Connoisseur’s Collection」に書いてある解答を紹介しよう。余計なことかもしれないし,宣伝めいて恐縮だが,この本は『とっておきの数学パズル』という題で日本評論社から,筆者を含めた3人による翻訳で最近出版された。

 さて,少し表現は違うがウィンクラーの本の解答は次のようなもので,やや複雑である。銀貨のストックが届いた朝,ヤマネは,その曜日の小部屋から順に銀貨を1枚ずつ入れていくが,最後の1枚だけは例外で,最後から2枚目を入れたのと同じ小部屋に入れる。すると,各小部屋に入る銀貨の枚数の金庫は受け取ったストックの枚数nによって,下の表のようなパターンになる。表では受け取ったのが日曜日でその小部屋を一番左とした。

 これらのパターンを日曜日の小遣いを渡す前の状態とするのだ。サンデイちゃんに小遣いを要求されたときは,日曜の小部屋から1枚取り出して渡すと,このパターンが1カ所だけ変わり,それが月曜日に小遣いを渡す前のパターンとなって区別がつくようになるから,日曜日の分はすでに渡したことがわかる。取り出すべき銀貨が入っている小部屋を決めるルールを言葉で述べるなら次のようになる。もちろんそれが実際の曜日と違うなら,銀貨はすでに渡した後である。

(1)同じ枚数の小部屋が6つとそれより1枚多い小部屋が1つある場合,1枚多い小部屋の次の曜日の小部屋から銀貨を取り出す。
(2)同じ枚数の小部屋が6つとそれより2枚多い小部屋が1つある場合,2枚多い小部屋から銀貨を取り出す。
(3)k枚,k+1枚,k+2枚の3種類の小部屋がある場合,隣り合うk枚とk+1枚の小部屋のうち,k+1枚の小部屋から銀貨を取り出す。

 ただし,(1) には例外がある。銀貨が1枚だけの小部屋が1つあり,他の小部屋が全部空っぽの場合,取り出すべき銀貨はもちろんその最後の1枚だが,取り出すべき日は,その小部屋のラベルの次の曜日である。

 このルールで金庫がうまく記憶装置として働くことを,読者は確認されたい。

 

小部屋のラベル Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
n=7k+1のとき k k k k k k k+1
n=7k+2のとき k+2 k k k k k k
n=7k+3のとき k+1 k+2 k k k k k
n=7k+4のとき k+1 k+1 k+2 k k k k
n=7k+5のとき k+1 k+1 k+1 k+2 k k k
n=7k+6のとき k+1 k+1 k+1 k+1 k+2 k k
n=7k+7のとき k+1 k+1 k+1 k+1 k+1 k+2 k

 

 

 しかし,上の解では銀貨を取り出す小部屋を決めるルールがやや複雑だと感じられたかもしれない。実は,筆者が見つけたもっと簡単な解があるので,それを述べよう。説明の都合上,日,……,土の各曜日にそれぞれ0,……,6の番号を割り当てておく。さてd曜日の朝にm枚の銀貨を受け取ったら(d+m)mod7曜日の小部屋に全銀貨を入れる(a mod bは,aをbで割った余り)。あとは次のルールに従うだけだ。

(1)d曜日にm枚の銀貨が(d+m)mod7曜日の小部屋に入っていたら,その日はまだ小遣いを渡していないので,その小部屋から1枚取り出して渡す。

(2)そうでなければ〔つまりd曜日にm枚の銀貨が(d+m+1)mod7の小部屋に入っていたら〕,その日はもう小遣いを渡したあとである。

 次に,グリフォンが言った小部屋の数がもっと少ない金庫でもうまくやれるという件だが,実は,金庫には3つ小部屋があれば十分である。この解は,ウィンクラー流に考えても得られるが,ますます複雑になるので,上の筆者の解を修正したものを与えよう。3つの小部屋の番号を0,1,2とする。d曜日の朝にm枚の銀貨を受け取ったとき,(d+m)mod7=0ならば小部屋2に全銀貨を入れる。そうでなければ((d+m)mod7)mod2の小部屋に全銀貨を入れる。

 d曜日にm枚の銀貨がある小部屋に入っていた場合,すでに小遣いを渡したかどうかの判断は次のようにすればよい。

(1)(d+m)mod7=0の場合, 銀貨が小部屋2に入っているなら,まだ渡していない。そうでなければ渡したあとだ。
(2)(d+m)mod7≠0の場合, 銀貨が((d+m)mod7)mod2の小部屋に入っているなら,まだ渡していない。そうでなければ渡したあとだ。

 曜日(と姪たち)の周期は奇数の7なので,これ以上に小部屋の数を減らすのは難しい。姪が偶数の8人で1週間が8日ならば,金庫の小部屋は2つだけで十分なのだが。
むむー,ここまで書いてきて,姪の誰かがお小遣いの受け取りを忘れるようなことがあると,この記憶装置がうまく働かなくなることに気がついた。ちゃっかり者の姪たちだから,そんな心配はなさそうだが,万が一のために,そういう日があれば,その日寝る前にその分の銀貨を取り出して自分のポケットに入れておくように,ヤマネにアドバイスしたほうが,姪たちのためかもしれない。

参考にした本:
Mathematical Puzzles: A Connoisseur's Collection(2004)
Mathematical Mind-Benders(2007) P. Winkler著

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