パズルの国のアリス

双子と壺と銀貨(解答)

坂井 公(筑波大学)題字・イラスト:斉藤重之

 

解答例取り出した銀貨を壺に戻すことなしに単純に最後の銀貨の印で決めるなら,ダムとディーの勝率がそれぞれm/(m+n)とn/(m+n)であることは明らかだが,違う印の銀貨が出てきたときにそれを壺に戻すことで状況がガラッと変わる。

もちろんm>0,n=0のときは確実にダムの勝ち,m=0,n>0のときは確実にディーの勝ちである。ところが,m>0,n> 0のときは,意外なことに,mとnの値によらず,勝率はともに1/2なのだ。したがって,ダムもディーも壺に入れる銀貨は1枚だけにしておくのが,勝ったときの犠牲を最小にする戦略である。

もし,ガラガラに銀貨1枚分の価値もなければ,もちろん何も入れないのがよいが,そうでなければ,たとえ銀貨1000枚分の価値があったとしても,入れるのは1枚で十分だ。

枚数と無関係に勝率が一定になるというこの結論は,最初に取り出された銀貨がどちらであるかに応じた確率を計算し,数学的帰納法を駆使しても得られるが,考える時点を一足飛びに先に進めることで,ほとんど計算なしで導くことができる。

勝者が決まる最後のラウンドを考えてみよう。この時点では,壺の中には同じ印の銀貨しか入っていない。では,その1つ前のラウンドでは,どうであったか というと,2種類の銀貨が入っていたが,一方の銀貨だけが先に全部取り出されてしまったことになる。このとき,どちらの種類の銀貨が残りやすいかという確 率を考えてみよう。これは,厳密に言えば,2種類のうち一方が他方よりすべて先に取り出される場合の条件付き確率であるが,明らかに,一方の印の銀貨がすべて他方よりも先に取り出される可能性と,すべて他方よりも後に残される可能性は等しい(厳密に計算するなら,このとき壺に残っている2種の銀貨の枚数を それぞれiとjとすれば,条件なしの場合,どちらも確率i!j!/(i+j)!で起こる)から,この可能性は5分5分だ。

2人の場合に「勝率が枚数によらない」というこの結論自体も意外であるが,ある意味でもっと意外な感じがするのが,この賭けを3人以上でやると,この結論が簡単には一般化できないということだ。つまり,3人がそれぞれの印を付けた銀貨を持ち寄り,同じルールで賭けをする。このとき,A,B,Cがそれぞれが壺に入れた銀貨を2枚,1枚,1枚としよう。やや面倒だが,このときの各人の勝率を計算してみると,26/72,23/72,23/72となる。また, A,B,Cがそれぞれ3枚,1枚,1枚を入れた場合は,6/16,5/16,5/16となり,たくさんの枚数を入れるほうがわずかに有利になることがわかる。他の枚数ではどうなるか,さらには,4人以上でどうなるかを調べてみるのも面白いかもしれない。

 

参考にした本:Mathematical Puzzles: A Connoisseur’s Collection(2004)Mathematical Mind-Benders(2007) P. Winkler著

 

 

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