パズルの国のアリス

“公平な配分案”で独り占め(問題)

坂井 公(筑波大学)題字・イラスト:斉藤重之

不思議の国で何か奇怪な問題が発生すると,いつも水ぎせるをくわえてキノコの上に座り,考え深そうにしている芋虫に,相談が持ち込まれる。今回,持ち込まれた問題は,以前はトランプ兵士たちへのボーナスの支給がよくあったのに,最近ではもらった記憶のある兵士は少ないということだ。

トランプ城の王侯たちは,ハートの女王をはじめとしてひどく短気でわがままだが,えこひいきがないのが取り柄で,スペード,ハート,ダイヤ,クラブの兵士10人ずつと城の雑用係兼まじない師であるジョーカーの計41人に銀貨1枚ずつのボーナスが,かつてはほぼ毎月のように出ていた。

ところが,「あまりに平等なのも勤労意欲をそぐので,働きに応じてボーナスの支給に多少のメリハリをつけたらどうか」という提案がジョーカーからあった。王侯たちは,もっともな提案と思ったが,具体的な配分案を考えるのが面倒なので,ジョーカーに案を出すように命じた。

出された案は,公平を期してジョーカー以外の兵士たちの投票に掛けたところ,過半数の賛成票を得て可決された。以後,これが慣習となった。つまり,配分 を変えるときはジョーカーが案を作り,それをほかの40人の兵士の投票に掛け,過半数の賛成票があればその案どおりに配分され,賛成票が反対票と同数以下 ならば案は否決となって前回と同じ配分になる。こうしたことが続いている。

実は,芋虫はキノコの上から動かず考えているだけで調査能力に乏しく,問題の実際の解決は,好奇心旺盛で助手のようになって身軽に動くグリフォンの調査に基づくことが多い。さて,今回もグリフォンが足しげくトランプ兵士たちや城の会計係の間を回って聞き込みをしてみると,いくつかのことがわかってきた。

・国庫からは,相変わらずほぼ毎月,兵士ボーナスとして銀貨41枚が支給されている。
・配分案は,いつも兵士に銀貨を何枚配るかというもので,その数値はどれも整数であり,かつ合計数は41枚だった。
・兵士たちの投票行動は,いつもきわめて単純で,提案が自分のボーナス額を増やすなら賛成,減らすなら反対,同じなら白票を投ずるというものであり,他人のボーナス額は気にもとめず,勤労意欲にももちろん無関係だった。

「ともかく,今はボーナスをもらっている兵士は多くはないのだな。そうすると現在はいったいどういう配分になってるんだ?」と組んでいた腕をほどき,芋虫は煙を吐きながら尋ねたが,そんなことはわかりきっている。

「現在の配分はわかるので調べた。ボーナスをもらっている兵士は数名だけで,残りのすべてがジョーカーの懐に入ってしまっている」とグリフォン。「ジョーカーには投票権はないのだね。票を買収したということは?」

「それはないのだけど……ははあ,からくりがわかってきたぞ」

グリフォンと芋虫はさらに検討して,ジョーカーの使ったからくりを見破った。そのからくりとはどのようなもので,ジョーカーは最終的に毎回いくらのボーナスを得ていたのだろう?

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