パズルの国のアリス

カードを順に積み上げろ(問題)

坂井 公(筑波大学)題字・イラスト:斉藤重之

いつものお茶会を中断して,ヤマネがテーブルの上に広げたカードを見ながら,なにやら考え込んでいる。ヤマネは,やがて1と書かれたカードを拾い上げ, その左の3のカードの上におもむろに重ねる。そこでしばらく考えたあと,その1を再びつまみ上げ,さらにその左の2の上に重ねる。

「ブッブー。お前,本当にアホだな。その1はさっき動かしたばかりじゃないか,それでうまく行くわけないだろ」と三月ウサギが半畳を入れる。「まあ,そうだけどな。でも,こいつときたら,たった半秒前の状態がどうだったかすら覚えていないんだから,そもそも無理というものだろ」と帽子屋。

「何が無理だって?」通りかかったグリフォンが興味をそそられて覗き込んだ。

「ちぇ,やなやつが来やがった」と帽子屋。「でも,これはお前でも,ヤマネに知恵は付けられないだろな。いいか,ここにカードの“山”が3つある」。

「“山”っていってもカードが1枚だけじゃないか。それに山は2つだろ?」とグリフォンが不審そうな顔をすると,「カードが1枚だけかどうかは,きちんと重ねたらわからないだろ?だから1枚でも山なのさ。今,右端の山は空いてるんだ。カードは全部で1,2,3の3枚しかなくて,2のカードは1の下にある。で,問題というのは,左端の山に下から3,2,1の順にカードを全部積み上げることだ。ただし,やっていいのは,どこかの山のトップのカードを別の山のトップに移すということを繰り返すだけだ」。

「それで,少し面倒くさくなるわけだな。しかし,要は左端を空けて,そこに3を移し,その上に2,さらにその上に1を置くってだけじゃないか」

「まあな,俺たちがやれば,たしかに簡単さ。ところがだ,このヤマネってやつは,あるカードを別の山に動かしたとたん,その下にカードがあったかどうかってことすら忘れちまう。だから,いつもでたらめにカードを動かしているようなもんで,うまく揃えられるかどうかはほとんど運任せということさ。いくら,お前でもヤマネに知恵を授けて,確実に揃えさせることはできまいさ」

この挑戦を受けて,グリフォンは熟考に沈んだ。ヤマネは,その間もほとんどでたらめにカードを動かし続けたが,もちろん偶然にカードが揃うことはなかった。そのうち,いやになってポットの中に入り込み,居眠りを始めた。三月ウサギと帽子屋が顔を見合わせて,そろそろお茶会をお開きにしようと思った頃,ガバッと顔を上げたグリフォンは乱暴にヤマネを叩き起こし,「この通りに動かしてみろ」とメモを押し付けた。ヤマネは半覚醒状態で目をこすりながら,何も考えずにメモの指示通りにカードを10手ほど動かしていると,カードがすべて左端の山に集まり,そのトップのカードは1になった。ぎょっとした帽子屋が調べてみると,正しく,その下には2,さらにその下には3のカードがあった。

グリフォンがヤマネに授けたメモはどういうものだったろうか? それには,見えているカードの1枚を別の山に移す指示が書いてあるが,その指示は見えていないカードには全く依存しないものだ。また,3つの山に最初どのようにカードが積まれていようと,その指示に従ってカードを動かしていれば,必ずいつか 目標のようにカードが揃うという。

カードが4枚あるときも,同様の指示書が作れるだろうか。もっと枚数が多かったらどうだろうか。カードには1から順に番号が書いてあり,目標は,左端に1をトップに順にカードを積むことで,山はいつも3つとする。

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