パズルの国のアリス

トランプたちの行進(解答)

坂井 公(筑波大学)題字・イラスト:斉藤重之

 

解答例最初の問題は,個々の兵士の動きを追うと,混乱して何がなんだかわからなくなるが,兵士を全体として眺めると,話はきわめて簡単になる。2人の兵士は鉢合わせすると向きを変えるが,ただすれ違ったとしても,個々の兵士を区別しない限り,全体としての動きは変わらない。これに気づくのがポイントだ。従って,普通に歩いて最初の兵士が守衛所に着く時刻をなるべく遅らせてやればいい。

初期配置では,兵士間は15m以上なければならないので,1人目を東の守衛所の位置に,それ以降は15mずつ空けて5人を配置する。同様に西の守衛所の位置から15mずつ空けて残りの5人を配置する。そこで,東に配置した兵士は西に,西に配置した兵士は東に行進させればいい。

鉢合わせしてもすれ違うだけだとすると,中央に近い2人の兵士は200-15×4=140m歩いたところで守衛所に到達する。鉢合わせしたときに反転する場合でも,全体の動きは同じだから140m分歩いたところで2人の兵士が休憩に入る。違うのはその2人が最初は両端にいた兵士だという点だけだ。中央の兵士をこれ以上守衛所から離すことは不可能だから,140m分の時間以上には全員行進を続けさせることはできない。

次の問題は,いささか不思議な感じのする問題だ。直感では,全員が同じ方向にパトロールしていない限り,クラブのエースがちょうど1時間後に全く同じ場所を通過することなどなさそうに思う。しかし,前問と同様,全体としての動きはすれ違う場合と変わらないので,1時間後に大手門前を同じ方向に通過する兵士がいることは間違いない。問題は,その兵士がクラブのエースである確率だ。

兵士たちに最初,自分の名前を書いた名刺を1枚だけ持たせ,他の兵士と出会ったときにその時に持っている名刺を交換させると,物事がわかりやすくなる。明らかにどの名刺も,兵士同士がどこで何回出会おうとちょうど1時間後に周遊路を一周してもとの位置に戻ってくる。

ここで,クラブのエースの名刺が途中で何回交換されるかを考えてみよう。説明をわかりやすくするために,エースを0番とし,反時計回りに1から9までの 番号を順に兵士と名刺に振る。エース,すなわち兵士0(と名刺0)が深夜0時に大手門を通過したとき反時計回りだったとし,そのとき時計回りに動いていた 兵士はk人だったとしよう。名刺0は,自分と同じ方向に進む名刺とは決して出会うことがないが,逆方向に回る名刺とは一周する間にちょうど2回出会う。名刺同士は,出会った時に必ず交換されるから,名刺0は合計で2k回交換されることになる。

さて,ここでもう1つ重要なことは,10人の兵士の配置を眺めたとき,互いの距離は変わっても順番は決して変わらない点だ。つまり,反時計回りに見て,0,1,2,……,9という順はいつまでたっても保たれる。

名刺0は反時計回りに動くのだから,兵士0から兵士1,兵士1から兵士2へと順に受け渡されて行くしかない。とすれば2k回の交換後に名刺0を持っている兵士の番号は明らかで,それは2kを10で割ったときのあまりの数となり,これを2k mod 10と書く。

今度は,兵士0が0時に大手門を通過したとき時計回りだったとしよう。先と同様にそのとき時計回りだった兵士の数をkとする。このk人には兵士0自身も含まれる。先と同様に考えると,名刺0は時計回りに移動して2(10-k)回交換される。従って,一周後に名刺0を持つ兵士の番号は-2(10-k) mod 10=2k mod 10 となる。

以上により,名刺0は兵士0の最初の向きに関係なく,一周後には(2k mod 10)番の兵士の手にあることになる。午前1時に大手門の前を通るのは,当然この兵士だが,それがエースであるのは2k mod 10=0の場合,つまり,kが0か5か10の場合だ。最初,それぞれの兵士の動く向きはランダムと仮定したので,時計回りの兵士の数が0または5または 10となる確率は,n人からi人を選ぶ組み合わせの数 nCi を用いて

(10C010C510C10)/210

=(1+252+1)/210=127/512

と書け,その値は約0.248だ。ついでながら,午前1時に大手門前を通る兵士が奇数番である可能性はなく,2番と8番の可能性はともに

(10C110C4)/210=(10C610C9)/210

=220/1024=55/256

4番と6番の可能性はともに

(10C210C7)/210=(10C310C8)/210

=165/1024 となることがわかる。

 

参考にした本:Peter Winklerによる次の2冊(ともに出版元はA K Peters, Ltd.)Mathematical Puzzles: A Connoisseur’s Collection(2004)Mathematical Mind-Benders(2007)ルイス・キャロルによる2冊(さまざまな翻訳本や注釈本が出ている)『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』

 

 

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