日経サイエンス  1999年11月号

サイエンス・イン・ピクチャー

古代エジプトの動物園

K. P. フォスター(エール大学)

 動物園や美しく手入れされた植物園の歴史は,驚くほど古い。約5000年前,中東では文字が発明され最初の都市が造られた。歴史的に重要なその後の700年の間に,古代エジプトのファラオは名高いピラミッドを建造し,メソポタミアの王は史上,初めての王国を築き上げ,両地域の支配者は動物園や植物園を創り出した。
 紀元前6世紀~前4世紀の間,強大なペルシャ帝国がエジプトとメソポタミア地方を侵略する。ペルシャの支配者たちは異国の動物や植物の採集を引き継ぐ。ペルシャ式植物園は,高い壁に囲まれた四角い形で,一般的に真ん中の小さな池で交差する水路によって四等分されていた。
 この精緻な植物園はパイーリ・ダエーザ(pairi-daeza,壁で囲まれた園)と呼ばれ,ギリシャ人はパラデイソス(paradeisos)と訳していた。その後1000年の間に,パラダイス(paradise,楽園)はキリスト教とイスラム思想の基本概念として定着する。古代エジプトとメソポタミアの植物園は,聖書とコーランの「エデンの園」へ転じ,天国で約束された至福の園の現世の姿となった。(本文より)

 

 

再録:別冊日経サイエンス210「古代文明の輝き」

著者

Karen Polinger Foster

エール大学客員教授で,同大学で近東言語学の博士号を取得した。現在,3冊目の学術書である「エデンの園:メソポタミア,エジプト,エーゲ文明における異国の動物と植物」を執筆中。子供向けの「虹の都:古代シュメールの物語」という本が,ペンシルベニア大学付属考古学・人類学博物館から出版されたばかり。

原題名

The Earliest Zoos and Gardens(SCIENTIFIC AMERICAN July 1999)

サイト内の関連記事を読む