日経サイエンス  1999年10月号

宇宙からやって来た生命のもと

M.P.バーンスタイン S. A. サンドフォード L. J. アラマンドーラ(NASAエームス研究センター)

 著者らNASAエームス研究センター宇宙化学研究所のチームをはじめ,生命を生み出すのに必要な重要な素材が宇宙からやってきたと考えている研究者は少なくない。生命が宇宙からやって来たとする説は「パンスペルミア説」と呼ばれて古い歴史をもつが,著者らの主張はこれとは違い,生命のもととなる有機分子が宇宙からやって来たという考えだ。
 生命体に見つかる複雑な有機分子は,星間雲の暗黒部にも存在する。40億年以上もの昔,1つの星間雲がつぶれて,太陽や惑星の産みの親となる渦巻く円盤(原始太陽系星雲)となった。熱に弱い分子の一部は,円盤の縁の極寒の部分で互いにくっついて彗星となり,太陽系形成に伴う猛烈な熱から逃れ分解されずに生き残ることができた。後に,彗星や星間雲の残骸が地球にこの分子を運び込んだ。
 地球外から持ち込まれた有機分子は透過性のカプセルを形づくり,この中で最初の原始細胞の形成が起きたのかもしれない。他の分子は太陽の紫外線の一部を吸収して壊れやすい分子を保護し,光エネルギーを化学的な栄養に変換するのを助けたのではないかと考えられる。このシナリオでは,40億年以上も昔に暗黒星間雲が高温のガスや塵の渦巻く円盤へと崩壊して私たちの太陽系の生みの親となった時に,生命の舞台が整えられたということになる。(本文より)

著者

Max P. Bernstein / Scott A. Sandford / Louis J. Allamandola

3人は米航空宇宙局(NASA)エームス研究センターの宇宙化学研究所で研究を行っている。バーンスタインはNASAエームス研究センターの契約研究員で,カリフォルニアのマウンテンビューにある地球外知的生命体探査協会(SETI)のメンバーでもある。彼は彗星と星間の氷塵の有機化学シュミレーションを行い,生命の起源との関連を探っている。サンドフォードとアラマンドーラはNASAエームス研究センターの所属研究員。サンドフォードは惑星間の塵粒子について独創性に富んだ研究を行い,Meteoriticsand Planetary Science誌の編集委員と,NASAの「スターダスト計画」の共同研究者も兼任している。エームス研究センター宇宙化学研究所長のアラマンドーラは,同研究所の創設者であり,星間と太陽系の氷の先駆的研究においては20年の経験を持ち,多環式芳香族炭化水素の仮説を最初に提唱した。インターネットの次のサイトで,著者らの研究についてさらに詳しく知ることができる。http://web99.arc.nasa.gov/~astrochm/

原題名

Life's Far-Flung Raw Materials(SCIENTIFIC AMERICAN July 1999)