日経サイエンス  1999年10月号

魚を襲う凶暴な藻類フィエステリア

J. M. バークホルダー(ノースカロライナ州立大学)

 米国東海岸で発見された淡水にすむ単細胞生物フィエステリア・ピシシーダ(Pfiesteria piscicida)は,有毒な渦鞭毛藻類の1種だ。フィエステリアは魚がいないときは無毒だが,魚がやってくると有毒な遊走子に変身し,毒素を放出しながら魚に近付いていく。毒で麻痺させた魚を攻撃し,魚を殺してむさぼり食う。この間にフィエステリアは配偶子から遊走子へ,さらにはアメーバへと変身を重ねていく。少なくとも24種類の姿に変身することが確認されている。
 フィエステリアの毒素は人にも害を及ぼす。汚染された水が皮膚に触れても危険だし,空気中のフィエステリアの毒素を吸い込んでも危険だ。研究室内で毒素の被害に合った科学者は,呼吸困難や頭痛のほか,物忘れ,読み書きや言葉の不自由といったアルツハイマーにも似た症状を引き起こし,回復に長い時間がかかった。同様の症状は危険な水域で仕事をしていたダイバーや漁師にも現れている。
 著者らのグループは9年前にフィエステリアの正体を突き止め,以来,その生態の解明に全力を注いできた。7月に来日した著者のインタビューも併せて紹介。(編集部)

 

 
再録:別冊日経サイエンス233「魚のサイエンス」

著者

Joann M. Burkholder

ノースカロライナ州立大学植物学科教授で,フィエステリアの世界的権威。科学研究と環境保護および環境教育に対する貢献により,米国野生生物連合会,アメリカ科学振興協会などの団体から数多くの賞を贈られている。著者の電子メールアドレスは,joann_burkholder@ncsu.eduノースカロライナ大学水生植物学研究室の有毒フィエステリア複合種に関するホームページは,http://www.pfiesteria.org

原題名

The Lurking Perils of "Pfiesteria"(SCIENTIFIC AMERICAN August 1999)

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フィエステリア水質環境