日経サイエンス  1999年10月号

特集:燃料電池の未来

小型化にシフトする日本の燃料電池開発

本間琢也(燃料電池開発情報センター)

 わが国の燃料電池開発は,電力事業用発電プラントやオフィスや病院などに適用されるコージェネレーション用を目的とする,比較的大容量のシステムを目的に進められてきた傾向がある。数年前からは自動車や家庭用電源,さらにポータブルな小規模小容量燃料電池デバイスの開発に対する関心が急速に高まってきた。さらにコンピューターや携帯電話など電子機器に適用できる数十から数百W級の超小型マイクロ燃料電池についても,数社が独自に開発研究をしている。
 日本では基礎研究の時代の後,1980年代に入って通産省のムーンライト計画で初めて本格的な燃料電池の開発が始まった。しかし,米国は宇宙船ジェミニの電源用に燃料電池に本格的に取り組み始めたのが1960年代とスタートが早かった。
 日本で当初取り組んだリン酸型(PAFC)燃料電池が最も早く商業化の域に達している。病院など200kW級の小型装置が動いている。米ユナイテッド・テクノロジーズと東芝の合弁企業のONSI,三菱電機,富士電機がリン酸型の市場に参入している。最近日本では,ビールの醸造過程で排出されるメタンガスを利用したリン酸型のコージェネレーション計画が多くのビール会社で実現されつつある。

著者

本間琢也(ほんま・たくや)

燃料電池開発情報センター常任理事,筑波大学名誉教授,工学博士。専門はエネルギー工学,とくに新エネルギーを研究している。著書は『エネルギーをつかむ』(講談社)など。趣味は音楽,ピアノ演奏。