日経サイエンス  1999年10月号

特集:燃料電池の未来

究極のクリーン自動車

A. J. アプルビー(テキサスA&M大学)

 自動車が増えるにつれ,内燃機関に代わる新しいエンジンの出現が待望されるようになってきた。石油供給の問題,さらに窒素酸化物や地球温暖化をもたらす二酸化炭素の排出を減らすにも,代替エンジンへの期待が高まっている。
 このような情勢の中で,世界の自動車メーカーは電気化学的過程で燃料から電力を取り出す燃料電池と,電力で駆動するモーターを組み合わせた燃料電池自動車が,実現可能性が高いのではないかと期待を抱かせるようになってきた。燃料電池は通常の乾電池とは異なり,燃料と酸素の供給がある限り発電し続けるので,これを動力源とする自動車は,少なくとも電池が劣化するまでは,燃料によって走り続けられる。
 世界の主要な自動車メーカーは大部分が,自動車の動力源用燃料電池の開発計画を発表しており,開発成果のデモンストレーションは人々の注目を集めている。ダイムラー・クライスラー,ゼネラル・モーターズ(GM)の両社は,2004年までに市場向け燃料電池自動車の生産を始めると予告しているし,ロンドンにあるゼブコは商業用自動車のための燃料電池を製作する計画を持っている。

著者

A. John Appleby

テキサスA&M大学応用電気化学科教授,電気化学システムと水素研究のためのセンター長。ケンブリッジ大学で冶金学者,電気化学者として実績を積んだ後,30年以上にわたって,生物電気化学と,あらゆる燃料電池タイプの電気化学的研究をしてきた。1970年代にはフランスのゼネラル・エレクトリシテのマルクーシー研究センターで燃料電池や新しいバッテリーの研究をした。1978年に新しい燃料電池研究のために,カリフォルニア州パロアルトの電力研究所に移った。また,スタンフォード大学の化学工学科顧問教授も務めた。1987年から現職。

原題名

The Electrochemical Engine for Vehicles(SCIENTIFIC AMERICAN July 1999)