日経サイエンス  1999年5月号

特集:21世紀 宇宙への旅

空と地上を結ぶ光のハイウエー

L. N. ミラボー(レンセラー工科大学)

 今のスペースシャトルやロケットなどは,いずれも大変な量の燃料(推進剤)を積み込んでいる。しかしもし,外部からの強力なレーザー光ビームなどを受けて推進するシステムが実現すれば,たくさんの燃料を積み込んだり,重たいエンジンを装備する必要がなくなるので,宇宙への旅にかかるコストは劇的に安くなるだろう。
 実際,このアイデアを実現しようという研究が米航空宇宙局(NASA)と米空軍の支援で進んでいる。私たちが「ライトクラフト(LightCraft)」と呼ぶ地上と軌道上を自由に往復できる未来の宇宙往還機だ(「クラフト」は「船」や「飛行機」などと訳される)。昨年,赤外線レーザーのパルス光を推進エネルギーに使ったライトクラフトの小型実験機が初飛行に成功した。
 実験機は底が凹面鏡のようになっていて,ここで反射されたレーザー光はリング状の焦点に集められ,その領域の大気を太陽の表面温度(約6000℃)の5倍近くまで加熱させる。すると,空気は爆発的に膨張,これが推進力となって実験機は上昇する。ライトクラフトは文字通りレーザー光の上にのって空に舞い上がるのだ。これは,地上と空を結ぶ光の“ハイウエー”を走る“車”に見立てることもできる。

著者

Leik N. Myrabo

レンセラー工科大学助教授(物理工学)。専門は先端的な推進工学とパワー工学,エネルギー変換,極超音速気体力学,エネルギー制御。

原題名

Highways of Light(SCIENTIFIC AMERICAN February 1999)