日経サイエンス  1998年5月号

地球環境研究を左右する米軍事機密情報

J.T. リケルソン(米国安全保障文書局)

 50年に及ぶ冷戦中,米国は何千億ドルもの資金をかけて,大掛かりな観測機器を設計・製作し,これらを使って,機密情報の収集や地形のデータを盛り込んだ地図を作ってきた。地球全域に配備された装置が収集する膨大な量の画像と大量のデータは,現在もワシントンD.C.周辺のいつくもの施設に保管されている。これらのデータのなかには現在も軍事的あるいは諜報的な価値をもつものもあるが,ほとんどは時が経つにつれ,さらにはソ連が崩壊したことにより,急速に価値を失っている。

 

 しかし,近年になって,多額の費用をかけて築き上げたデータの宝庫に,新しい用途を与えようという考えが定着してきた。軍事目的で収集した情報の多くは科学的にも有用であり,特に地球環境研究への活用に期待が集まっている。しかし,一方には,最高機密扱いのデータを(研究目的といえども)一般に公開することに対し,根強い反対の声もあるようだ。

 

 こうした考えを受けて,諜報部員と科学者が同じ場で機密データの科学的利用を検討する「メデイア(Medea)」というグループが誕生した。(本文より)

著者

Jeffrey T. Richelson

現在,米国ワシントンD.C.にある国家安全保障文書局(National Security Archive)の主任研究員。American's Secret Eyes in Space: The U.S. Keyhole Spy Satellite ProgramやA century of Spies: Intelligence in the Twenties Centuryをはじめ,諜報に関する7冊の著書がある。1975年にロチェスター大学より政治学でPh.D.を取得した。この記事に示されている考え方は,必ずしも国家安全保障文書局の考え方ではない。

原題名

Scientists in Black(SCIENTIFIC AMERICAN February 1998)