日経サイエンス  1997年12月号

プリオンはどこまで解明されたか

S.B. プルシナー

 本論文の著者プルシナーが今年のノーベル生理学医学賞を受賞しました。この論文は受賞を記念して1995年3月号より再掲載したものです。

 

 

 発見以来,さまざまな憶測が飛び交い,謎の“病原体”といわれたプリオンの正体が明らかになってきた。

 

 プリオンは,さまざまな神経変性疾患を引き起こす「タンパク質性感染粒子」として,1980年代の前半に著者プルシナーにより発見された。クールー,クロイツフェルト・ヤコブ病,ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病,ヒツジのスクレイピー,ウシ海綿状脳症(狂牛病)などの痴呆を伴う致死性の神経変性疾患は,いずれもプリオンが原因となって発病する。

 

 プリオンは他の病原体と違って,まったく核酸をもたない。病原性の本体はプリオンタンパク質(PrP)である。PrPはだれもがもっており,通常は無害である(生体内でどのような役割を果たしているのかは不明)。ところが,PrPの立体構造の一部が変化すると,正常型PrPは変異型PrPに置き変わり,さらに,変異型が正常型に接触することで仲間を増やし,変異型PrPの量が危険なレベルにまで達すると発病するらしい。最近では,トランスジェニックマウスを用いた研究も,PrPが核酸を介さずに感染の仲立ちをするという仮説を支持している。(編集部)

著者

Stanley B. Prusiner

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の医学部の神経学・生化学の教授。米国科学アカデミー,医学協会,アメリカ科学・芸術アカデミーの会員である。彼はまた,プリオンの研究によって多くの賞を得ており,最近ではアルバート・ラスカー基礎医学賞やパウル・エールリッヒ賞を授与された。本文は,Scientific American誌に掲載された2度目の論文である。

原題名

The Prion Diseases(SCIENTIFIC AMERICAN January 1995)