日経サイエンス  1997年12月号

細胞に人工のドアを作る

H. ベイレー(テキサスA&M大学)

 細胞膜には“相手”によってドアを開け閉めし,細胞の内外に出入りする分子を制御している門番役のチャネルがある。この門番役を人工的に作るというのが,著者たちの目的である。

 

 病原菌の作り出す,細胞膜に孔をあけるタンパク質を改造して,孔の開け閉めをコントロールできるところまで来た。用途はたくさんある。ガン細胞に孔をあけ,抗原剤を入れやすくする。逆に薬を入れたカプセルに人工ドアを付け,患部についたら中の薬を出すようにすることもできる。

 

 面白い用途は高感度のバイオセンサーだ。目的とする分子,たとえば,神経ガスなどの毒物の分子があると孔が開いて,その分子の存在がわかるようにもできる。

 

 孔の大きさの調節など,まだ課題はあるが,これからの発展が期待できる新しい研究分野だ。(編集部)

著者

Hagan Bayley

テキサスA&M大学,医学生化学および遺伝学部の教授で学部長である。同大学の化学の教授でもある。ベイリーはα溶血素に関する研究を,マサチューセッツ州シュローズベリーにあるウスター実験生物学財団で開始した。化学と生物学の境界で研究をし,基礎科学およびバイオテクノロジーの両方に応用できるタンパク修飾技術を開発している。

原題名

Building Doors into Cells(SCIENTIFIC AMERICAN September 1997)