日経サイエンス  1997年6月号

カマリン・オンネスと超伝導の発見

R. ド・ブリーン・オーボッター(ライデン大学カマリン・オンネス研究所)

 19世紀末から今世紀初めにかけては物理学の黄金時代だった。X線の発見(レントゲン),量子力学の基礎の確立(プランクなど),相対性理論の発表(アインシュタイン)など,当時の研究者を驚かせるような出来事が相次いで起きた。物性物理学の分野でも大きな出来事があった。極低温状態の物質で見られる超伝導現象の発見だ。

 

 発見までの前史は,ヨーロッパを舞台にした極低温を目指す研究競争だった。極低温の追求は,より沸点が低い気体の液化という形をとって進んだ。1877年にフランスのカイユテ,スイスのピクテがそれぞれ独立に窒素と酸素の液化に成功,続いて1898年にはイギリスのデュワーが水素の液化を達成した。そして研究者たちの最終目標であったヘリウムの液化に初めて成功したのが,オランダの実験物理学者カマリン・オンネスである。

 

 オンネスはそれまでの低温レースではライバルたちに遅れを取り,周囲の圧力で研究が中断の止むなきに至ったこともあった。しかし,ライバルの研究成果を積極的に生かし独自の工夫を重ねることで,1908年,ヘリウム液化に成功,絶対温度4.2Kに到達した。

 

 そして1911年,液体ヘリウムを使った極低温での水銀の電気抵抗の計測中,彼自身も思いもよらなかった超伝導現象を発見した。このオンネスの大発見により,低温物理学という新しい物質世界の扉が開かれることになった。(編集部)

著者

Rudolf de Bruyn Ouboter

オランダ,ライデン大学のカマリン・オンネス研究所の実験物理学教授。専門分野は低温物理学で,特に超伝導体の特性,超流動ヘリウム,メゾスコピックジョセフソン接合素子などの研究に携わる。科学史にも造詣が深い。

原題名

Heike Kamerlingh Onne's Discovery of Superconductivity(SCIENTIFIC AMERICAN March 1997)