日経サイエンス  1996年9月号

何がペルム紀末の大量絶滅を起こしたのか

D. H. アーウィン(米国立スミソニアン研究所自然史博物館)

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 ジュラ紀や三畳紀といった地質年代の区分は,年数の長さとは関係なく,その時代に繁栄していた動物をもとに分けている。15世紀や16世紀といった区分ではなく,平安時代や鎌倉時代といった区分と似ているかもしれない。歴史には中世,近代といったさらに大きな区分があるが,地質年代では,古生代や中生代がこれにあたる。こうした区分の境界では,動物たちの交代劇があったはずである。

 

 2億5000万年前はペルム紀と三畳紀の境となっているだけでなく,古生代と中生代の境にもなっている。このときに起きた何らかの天変地異のせいで,実に生物の90%が絶滅したのである。地球の生命史上,最も悲惨な大量絶滅である。恐竜が滅んだ,中生代と新生代の境(白亜紀と第三紀の境)も,ペルム紀-三畳紀の大量絶滅に比べれば,滅んだ科の数にして半分に過ぎない。

 

 何がこの大量絶滅をもたらしたのかは,わかっていないが,隕石などの衝突ではないようだ。海水準の低下と再上昇,活発化した火山活動などが候補に挙げられているが,どれも単独ではあれほど大規模な絶滅を起こすことはできない。いくつかのできごとが,同時期に起きたとしか考えられない。

 

 原因と同じくらい興味深いのが,この大量絶滅を生き延びた生物である。彼らが生き延びたのは,何か優れていたためだろうか,それとも偶然なのだろうか。古生物学者たちは,“優れていた点”をまだ見つけだしていない。もし,偶然だとしたら,ダーウィン以来続いていた「適者生存の原理」は,意味のないものとなる。(編集部)

著者

Douglas H. Erwin

国立スミソニアン研究所自然史博物館古生物学部のキュレーターで,古生代の腹足類とバージェス頁岩を研究している。彼の研究は,古生代の腹足類の進化史と大規模なスケールでの進化パターン,ペルム紀末の大量絶滅後とカンブリア紀の動物進化の爆発的拡大に焦点を合わせている。シベリア,中国,ニューファウンドランド,米国西部全域のカンブリア紀とペルム紀の岩石を研究した。著作には『古生代の大いなる危機:ペルム紀の生命と死』(コロンビア大学出版,1993年),『化石記録に於ける種分化の新しい研究方法』(ロバート・アンスティーと共編,コロンビア大学出版会,1995年)がある。

原題名

The Mother of Mass Extinctions(SCIENTIFIC AMERICAN July 1996)

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