日経サイエンス  1996年3月号

新局面を迎えた超弦理論

M. マカージー(SCIENTIFIC AMERICANスタッフライター)

 物理学者は,宇宙のすべての現象をたった1つの方程式で記述できるような最終理論(TOE)を追い求めている。そのために現在最も期待を集めているのが「弦理論」である。弦理論では,物質の最小の単位は小さな“ひも”であると考える。

 

 10年ほど前に超弦理論は大きく飛躍したが,その後,さまざまな問題が露呈した。たとえば,5つの超弦理論が発見されてしまったし,その解も何千通りもあることが明らかになった。これでは,とうてい究極の理論にはほど遠い。

 

 こうした一種の膠着状態を破ったのは,デュアリティーという考え方である。これも一種のシンメトリー(対称性)の考え方で,これにより,基本粒子と複合粒子の関係をシンメトリーに考えることが可能になった。その上,ある場合に,このデュアリティーを正確な計算で確かめることができたのだ。

 

 この突破口を開いたのはインドのタタ研究所のセン(Ashoka Sen)博士である。彼の計算結果をきっかけに,いま,超弦理論の研究者はかつてない“フィーバー状態”にある。アスペンで開かれた理論物理学者の研究集会の様子を,サイエンティフィック・アメリカン誌の若手女性編集者がレポートする。

著者

Madhusree Mukerjee

原題名

Explaining Everything(SCIENTIFIC AMERICAN January 1996)

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