日経サイエンス  2011年9月号

みんなの衛星キューブサット

A. S=K. パン(オックスフォード大学) B. トウィグス(モアヘッド州立大学)

 世界初の人工衛星スプートニクは机にのるほどの大きさだった。以降,大型化の一途をたどり,半世紀後にはサッカーグラウンドほどもある国際宇宙ステーションが地球を周回するようになった。ところがここに来て電子技術の高度化と打ち上げ機会の多様化,低価格化を背景に新たな潮流が生まれた。各国の大学や研究機関では,手のひらサイズの人工衛星キューブサット作りが盛んになっている。一辺10cmのサイコロ型で重さ1kg。これを2~3個合わせた形にすることもある。当初は「おもちゃのようなもの」と思っていた宇宙開発関係者も注目しており,新たな宇宙技術の試運転にキューブサットを使う試みも始まった。1万ドル以下の「打ち上げ付きキューブサット・キット」の発売を計画しているベンチャーもある。
 かつてコンピューターは巨大かつ非常に高額で,作るのも使うのも専門家頼りだったが,米アップルが世界初の家庭用パソコンを生み出して以来,急速に社会に普及した。好きなソフトウエアを載せて使うほか,手作りパソコンをホビーとして楽しむ人も増えている。キューブサットは,衛星界の“パソコン”になるかもしれない。

著者

Alex Soojung-Kim Pang / Bob Twiggs

パンはペンシルベニア大学で科学史のPh. Dを取得し,天文学史や科学のフィールドワーク,新技術が社会に及ぼす影響などについて健筆を振るっている。オックスフォード大学サイードビジネススクールのアソシエイト・フェローで,現在はマイクロソフトリサーチ・ケンブリッジの客員研究者。トウィグスはスタンフォード大学航空宇宙学科にいた時にキューブサットの概念を提唱した。2009年からケンタッキー州にあるモアヘッド州立大学教授。アイダホ大学電子工学科を卒業し,スタンフォード大学で電子工学修士を取得した。

原題名

Citizen Satellites(SCIENTIFIC AMERICAN February 2011)

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