日経サイエンス  2011年8月号

擬態の達人たち

P. フォーブズ(サイエンスライター)

 自分の姿を木の枝や葉っぱに似せて捕食者の目を逃れる昆虫はよく知られているが,近年各地で視覚以外の感覚に訴える様々な“だましの達人”が発見されている。ある種のチョウの幼虫はアリの幼虫と同じような化学物質を放出してアリの巣に運んでもらい,巣に入ってからは女王アリに似た音を発してアリたちに食料を運ばせる。毒ガをまねた警告音を発する無毒のガもいる。視覚に関する擬態も様々で,インドネシアで発見された小さなタコは,毒カレイや毒カサゴの姿形とともに,その泳ぎ方すらもコピーする。ある種のチョウでは,繁殖活動と擬態に関連する遺伝子との結びきが判明するなど,進化の謎を擬態から読み解く研究も進んでいる。

 

 

再録:別冊日経サイエンス206「生きもの 驚異の世界」

著者

Peter Forbes

ロンドンを拠点とするサイエンスライター。最新刊「Dazzled and Deceived: Mimicry and Camouflage」は2011年のウォリック賞を受賞した。本誌への執筆は「自然に学んだセルフクリーニング材料」(日経サイエンス2008年11月号)に続き今回が2回目。

原題名

Masters of Disguise(SCIENTIFIC AMERICAN May 2011)

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