日経サイエンス  2010年11月号

対談

最強の生き物 クマムシの素顔

鈴木忠(慶應義塾大学) 茂木健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究所)

 カラカラにひからびても,氷漬けになっても,真空中に放り出されても,放射線を浴びても平気。クマムシはそんな不思議な生物だ。体長は1ミリにも満たず,肉眼で見ることは難しいが,高山から深海,砂漠から南極までいたるところに生息し,普段は8本足でノコノコ歩いている。だが乾いた場所や氷の中ではきゅっと縮こまって樽のような形になり,驚くべき耐性を発揮する。

 

 そんなクマムシに魅せられて飼育し,長年観察を続けている慶應義塾大学の鈴木忠准教授を,茂木健一郎さんが訪ねた。遺伝子解析などの今どきの生物学研究の手法は使わず,ひたすら動物を採集して観察するその研究スタイルは,生物学の原点だ。

 

 茂木さんもかつてファーブルに魅せられ,蝶の採集に夢中になった。2人の元昆虫少年が,実際に歩き回るクマムシを顕微鏡で観察しながら,「死んでも生き返る生物」と思われた発見の経緯から,驚異的な生存能力に関する伝説と実態,謎に包まれた性生活?と繁殖まで,クマムシの生活史を語り尽くす。

 

「茂木健一郎の科学の興奮」にも収載

ゲスト:鈴木忠(すずき・あつし)
鈴木忠は1960年,愛知県生まれ。名古屋大学大学院博士課程単位取得退学。浜松医科大学を経て,91年慶應義塾大学助手。98年に金沢大学大学院自然科学研究科より学位取得,理学博士。慶應大専任講師を経て2009年より現職。2005~06年コペンハーゲン大学動物学博物館客員研究員。著書に『クマムシ?!―小さな怪物』(岩波書店)など。

ホスト:茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
茂木健一郎はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年,東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了,理学博士。理化学研究所などを経て現職。慶應義塾大学研究特別教授。専門は脳科学,認知科学。「クオリア」をキーワードに脳と心の関係を研究している。著書に『脳とクオリア』(日経サイエンス社),『脳と仮想』(新潮社)ほか多数。

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