日経サイエンス  2010年10月号

恐竜世界にいた鳥

G. ダイク(ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン)

 鳥が小型肉食恐竜から進化したことははっきりしているが,現代的な体形の鳥がいつ登場したのかは,はるかに不透明だ。化石に基づく従来の考え方では,現代的な鳥が現れたのは,6500万年前の小惑星衝突で恐竜など多くの生物が絶滅した後とされる。

 

 小惑星衝突によって陸生脊椎動物の多くが絶滅したが,古いタイプの鳥の一部は幸いにも絶滅を免れ,これが現生鳥類につながったとされてきた。その根拠は単純で,小惑星衝突前には古鳥類が進化していたものの,現生鳥類と同じ解剖学的特徴を備えた鳥の化石は小惑星衝突後のものだけだからだ。

 

 カモやカッコウ,ハチドリなど現生鳥類を含む「新鳥類」が生まれたのは進化的放散の典型例だろう。絶滅事象によってニッチ(生態的地位)が空いたことに対応して,種の多様化が進んだと考えられる。この場合,恐竜と翼竜(空を飛ぶ爬虫類),古い鳥類によって占められていたニッチが空いた。

 

 しかしここ10年で,モンゴルや南極で発掘された化石記録と現生鳥類のDNA解析から,新鳥類の登場は6500万年前よりもさらに昔だったらしいことが明らかになった。鳥類進化に関する伝統的な見方を覆す発見だ。同時に,古い鳥たちが大量絶滅で滅んだのに,これら初期の現代的な鳥が生き残ったのはなぜなのかという疑問が浮上した。私が思うに,これが鳥類進化に関して残っている唯一最大の謎といえる。

著者

Gareth Dyke

アイルランドにあるユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの古生物学者。生きている鳥よりも,干からびたペシャンコの鳥化石を好む。英国の大学の学部生だったころに,動物の飛行に興味を抱いた。鳥とその飛行の進化を研究,世界中で化石を発掘・調査してきた。博物館を訪ねたり砂漠で発掘調査したりと忙しいが,そうした旅に出ていないときには,ヨーロッパの19世紀の歴史を学ぶのを楽しんでいる。オーストリア=ハンガリー帝国のスパイでもあったトランシルバニア人恐竜化石コレクターに関する本を執筆中。

原題名

Winged Victory(SCIENTIFIC AMERICAN July 2010)

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